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2023.7.19
2023.7.12
放課後等デイサービスの開業資金はどれくらい必要?資金調達方法は?
目次
放課後等デイサービスの開業資金は、初期費用とランニングコストを合わせ、約1,000万円程度です。
人気の飲食店など店舗ビジネスと比較すると2分の1程度の資金であるため、小資本から始められるビジネスと言えます。
また、自己資金が少ない場合は、公的な融資制度を活用しやすいのもメリットです。
この記事では、放課後等デイサービスの開業を検討されている方に、放課後等デイサービスの開業に必要な金額の目安から調達方法、注意点まで詳しく解説します。
放課後等デイサービスの開業資金の目安は?
放課後等デイサービスの開業資金は、1,000万円程度が目安となります。
その内訳としては
- 初期費用:500万円程度
- 運営費用(開業後、黒字になるまでの販管費):500万円程度
です。
したがって、開業のみであれば500万円からでも可能です。
そのほか、当面の生活費として100万円程度を用意できれば安心でしょう。
どのような費用がどれくらい必要になるのか、下記で詳しく解説していきます。
初期費用
初期費用は開業までに必要となる資金で、一般的に500万円程度が目安です。
初期費用の内訳は以下の通りです。
▼放課後等デイサービスの初期費用の例
項目 | 費用の目安 |
---|---|
法人設立 | 30万円 |
物件取得(賃貸契約)・内装施工 | 100万円+150万円=250万円 |
送迎車(購入の場合) | 100万円程度 |
人員採用 | 50万円 |
利用者募集 | 10万円程度 |
備品(家具や遊具など) | 30〜50万円程度 |
合計 | 470〜490万円 |
紹介した初期費用は、あくまでも一例です。
たとえば人員採用は100万円ほどかかるケースもありますが、スカウト型採用やハローワークを活用して費用を抑えるのが一般的です。
同様に、利用者募集もチラシやホームページ開設費用であれば、10万円程度に抑えられます。
逆に送迎車をリースにすれば運営費となりますし、備品などはいろいろそろえようとするほどに費用がかかってしまう点には注意しましょう。
運営費用
運営費用は、開業後少なくとも数ヶ月(3〜7ヶ月)は必要となるため、500万円程度を運転資金として準備しておくのが一般的です。
運営費用の内訳は以下の通りです。
▼放課後等デイサービスの運営費用(3ヶ月分)の例
項目 | 費用の目安 |
---|---|
人件費 | 120万円x3ヶ月=360万円 |
家賃 | 40万円x3ヶ月=120万円 |
諸経費(光熱費や駐車場代など) | 10万円x3ヶ月=30万円 |
合計 | 510万円 |
ここでは、人件費を3ヶ月分で計上していますが、7ヶ月で計上した場合の人件費は840万円になります。
家賃は3ヶ月分を計上していますが、所有物件を利用した場合には、家賃はかかりません。
生活費
収益が得られるのは開業から2ヶ月以降となるため、当面の生活費も準備しておいたほうがよいと考えられます。
生活費として必要となる金額は家族構成や住居、ライフスタイルなどにより異なりますが、統計によると2人暮らしの1ヶ月の生活費(家賃を除く)は約22.9万円となっています(※)。
したがって、少なくとも100万円程度、家賃や住宅ローンなどを考慮するときには、150万円程度を用意しておいた方が安心でしょう。
出典:「家計調査結果 2021年 世帯人員別1世帯当たり1か月間の収入と支出」(総務省統計局)資金が足りない場合の資金調達方法は?
放課後等デイサービスを開業したくても、手元に資金がないこともあるでしょう。
そういった場合は、資金を調達することで開業が可能になります。
資金の調達方法はいくつかあると思いますが、できるだけ安心のおける機関から借りるとよいでしょう。
一般的には、公的機関や金融機関からの借り入れがおすすめです。
主な資金調達方法は以下の4つです。
- 日本政策金融公庫の「新創業融資制度」
- 各自治体の「中小企業制度融資」
- 独立行政法人福祉医療機構の「福祉貸付事業」
- 金融機関からの融資(保証付融資・プロパー融資)
1. 日本政策金融公庫の新創業融資制度
政府系金融機関である日本政策金融公庫は、新たに事業を始める人を対象とした「新創業融資制度」を設けています。
他の融資制度と併用することにより、無担保・無保証人で限度額3000万円(運転資金1500万円)までの融資を受けることが可能です。
新創業融資制度は公的融資であるため民間融資よりも低金利であることがメリットですが、審査に時間がかかることが多く、綿密に練られた事業計画がないと審査に通過しづらい点には注意が必要です。
また、日本政策金融公庫のホームページには明記されていませんが、かつて要件の一つだった「雇用創出の有無」も審査に影響しているものと考えられます。
雇用創出などの要件
- 雇用の創出を伴う事業を始める人
- 現在勤める企業と同じ業種の事業を始める人
- 技術やサービスなどに工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める人などのいずれか
なお、創業資金総額の10%以上の自己資金が必要とされているものの、
- 現在勤める企業と同じ業種の事業を始める人
- 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める人
などに該当する場合は、免除されることもあります。
▼新創業融資制度の特徴
利用可能者 | 次のすべての要件に該当する人 (1)創業の要件 新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない人 (2)自己資金の要件 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない人は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる人 |
使途 | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
金利 | 基準金利2.45%~3.45% |
返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金7年以内 |
担保・保証人 | 原則不要 ※法人の代表者が連帯保証人となる場合は、利率が0.1%低減される |
自己資金 | 創業資金の10%以上 |
2. 各自治体の「中小企業制度融資」
自治体によっては、中小企業が金融機関から融資を受けやすくするための「制度融資」を設けていることがあります。
中小企業制度から融資を受けるときには信用保証協会が保証を行い、資金調達をサポートする仕組みになっています。
この制度では無担保・無保証人でも金融機関から融資を受けやすくなることがメリットとなりますが、保証対象となるのは事業資金に限られていますので気を付けてください。
また、審査には最低でも1ヶ月、長くて数ヶ月かかります。
開業までの時間を逆算し、ゆとりを持って準備できるよう、早めに動くことが大切です。
融資限度額や利率、返済期間等は自治体の制度によって異なります。
まずは各自治体に問い合わせをして、どのような内容になっているのか確認しましょう。
▼東京都の「創業融資」の例
利用可能者 | 都内に事業所(個人事業者は事業所又は住所)があり、東京信用保証協会の保証対象業種を営む中小企業者で以下3点のいずれかに該当すること 1.現在事業を営んでいない個人で、創業しようとする具体的な計画を有している |
使途 | 運転資金、設備資金 |
融資限度額 | 3,500 万円 |
金利 | 【固定金利】 (融資期間により異なり、融資時の金利が完済まで適用される) 融資期間 33年以内 1.9%以内 3年超 5年以内 2.1%以内 5年超 7年以内 2.3%以内 7年超 2.5%以内 【変動金利】「短プラ+0.7%」以内 <責任共有制度の対象外となる場合> 【固定金利】 (融資期間により異なり、融資時の金利が完済まで適用される) 融資期間 3年以内 1.5%以内 3年超 5年以内 1.6%以内 5年超 7年以内 1.8%以内 7年超 2.0%以内 【変動金利】「短プラ+0.2%」以内 |
返済期間 | 運転資金 7 年以内(据置期間1 年以内を含む) 設備資金 10 年以内(据置期間1 年以内を含む) |
担保・保証人 | 担保:8,000万円以下は不要 保証人:原則不要 |
自己資金 | 特に要件なし |
3. 独立行政法人福祉医療機構の「福祉貸付事業」
福祉貸付事業は、放課後等デイサービスを含む社会福祉施設を整備する際に必要となる設備・設置資金、施設運営に必要な経営資金を、長期・固定・低金利で融資する制度です。
融資限度額などは、いかに自分の手持ち資産があるのかによって変わってくるため、ある意味シビアな融資制度と言えるでしょう。
しかしながら、低金利で借りられるのは大きなメリットになります。
▼独立行政法人福祉医療機構「福祉貸付事業」の例
利用可能者 | 放課後等デイサービスを含む障害児通所支援事業の場合は法人であること |
使途 | 設置・整備資金、経営資金 |
融資限度額 | (1)と(2)のいずれか低い額まで (1)(基準事業費 - 法的・制度的補助金)× 融資率 (2)担保評価額 × 70% ※貸付金額は10万円単位、貸付金の最低額は200万円 |
金利 | 年0.500%~1.600% |
返済期間 | 1年~20年 (資金用途および貸付金額によって異なる) 建築資金:5年~20年 設備備品・整備資金:5年~15年 土地取得資金:5年~20年 経営資金:1年~3年 |
担保・保証人 | 原則として物件の担保提供が必要 法人代表者等、個人の連帯保証人を立てること (貸付金利に上乗せすることで保証人なしも可能) |
自己資金 | 担保が必要となるため、自己資金は必須 |
4. 金融機関からの融資(保証付融資・プロパー融資)
金融機関から融資を受ける方法には、信用保証協会の保証を付ける「保証付融資」と直接融資を受ける「プロパー融資」があります。
プロパー融資は保証料が不要で低金利となりますが、返済能力が厳しく問われるため、融資のハードルが高く、特に開業前や開業直後の融資は難しいことが多いです。
また、提出すべき書類も多く準備も大変です。
さらに主な融資先が大企業や中堅企業などとなるため、創業間もない企業や創業前では借りることは難しくなっています。
そのため、金融機関からお金を借りたい場合は、信用保証協会を利用したほうが良いでしょう。
なお、プロパー融資の場合、公的機関に比べて審査のスピードは速くなっています。
また、新規の口座開設やその他取引の有無によって金利が優遇される可能性もあります。利用したい金融機関の融資はどのような制度になっているのか、金融機関の取り組みなども知るために、早い段階から相談しておくことをおすすめします。
▼保証付融資とプロパー融資の特徴
保証付融資 | プロパー融資 | |
---|---|---|
主な対象 | ・中小企業、小規模事業者等 ・ベンチャー企業や創業企業もOK (業種により企業規模の規定がある) |
・大企業や中堅企業がメインとなる ・創業から3期未満の企業の場合、融資が受けられない可能性は高い |
融資限度額 |
無担保の場合は8,000万円まで 担保があれば2億8,000万円まで |
上限なし |
金利 | プロパー融資より高め | 保証付き融資より低い |
保証料 | 融資金額の0.45~2.20%が目安 | なし |
審査の厳しさ | プロパー融資より厳しくない | 保証付融資より厳しい |
審査機関 | 信用保証協会 | 各金融機関 |
担保・保証人 | 原則、担保や保証人は不要 | 担保や担保を求められることがある |
放課後等デイサービスの開業後、どれくらいで初期費用を回収できる?
放課後等デイサービスは、給付金収入は非課税となり、利益率も高いため、収益性に優れていると言われている事業です。
たとえば1ヶ月の売上が300万円、人件費150万円、家賃等50万円の例で確認しましょう。
300万円-150万円-50万円=100万円
つまり、100万円が営業利益となるため、利益率33.3%が目指せるのです。
放課後等デイサービスの年間の平均収益額は378万5,000円のため、稼働率が90%となる2〜3年目には黒字転換できると考えられています。
とはいえ、赤字経営となっている事業所も約4割に及んでいます。
できるだけ早く黒字転換するためには、他の施設との差別化になるだけでなく、法改正や報酬改定などが行われたとしても、それに左右されないような運営をすることが大事です。
基本的には、以下のポイントを満たすとよいでしょう。
黒字転換するために心がけたいポイント
- 法改正や報酬改定に左右されない質の高い支援を行うこと
- 心理指導担当職員などの専門職を配置して十分な加算を確保すること
- スタッフを定着させること
福祉事業の開業サポートを多く手掛けているミライクスは「放課後等デイサービス実践講座」も開講しています。
約半年間の研修型コンサルティングにより、開業後の運営も見据えた準備が可能です。
開業後にロイヤリティが発生することは一切ないため、キャッシュフローに影響しすることもありません。
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