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2023.7.21
2023.7.12
障害者の就職が難しい理由は?現状の就職率から就職支援の活用法まで解説
目次
「障害者の就職は難しい」という話を聞いて、将来の不安を抱えている人がいるのではないでしょうか。
2021(令和3)年の統計データによると、大学等(専修学校を含む)卒業者の就職率が96.0%なのに対し、障害者の就職率は42.9%となっています(※)。
このように、障害のある方の就職が難しいとされる理由はいくつかあります。
企業側と本人側のそれぞれに考えられる理由をまとめると、以下のとおりです。
企業側 | 本人側 |
---|---|
・職種業種や職種が障害者に適さない ・現場の理解や環境整備が十分でない ・障害者に任せられる仕事が見当たらない ・短期間で離職される可能性がある |
・基礎スキル不足 ・自分の障害に対する理解が不十分 ・日常生活の管理不足 |
しかし、障害があるからといって就職が不可能だというわけではありません。
障害者の働き方に理解を示す企業を探して自分に合う職場を見つければ、継続して働くことができます。
この記事では障害のある方の就職が難しいとされる理由から、障害者の就職の現状、就職に向けた準備方法までをわかりやすく解説します。
※出典:「令和3年度大学等卒業者の就職状況調査(令和4年4月1日現在)」(文部科学省・厚生労働省)
障害者の就職が難しい理由は?
障害のある方の就職が難しい理由は企業側と本人側のそれぞれにあり、その内容も異なります。
ここでは企業側の理由と本人側の理由に分け、個別に詳しく見ていきます。
企業が障害者の雇用を難しいと考える理由
企業が障害者の雇用を難しいと考える理由は、以下の4つです。
企業が障害者の雇用を難しいと考える理由
- 業種や職種が障害者に適さない
- 現場の理解や環境整備が十分でない
- 障害者に任せられる仕事が見当たらない
- 短期間で離職される可能性がある
それぞれ簡単に解説します。
1.業種や職種が障害者に適さない
現在は「障害者雇用率制度」に従い、従業員数に対して一定割合の障害者を雇用することが義務づけられています。
民間企業は従業員数の2.3%、国・地方公共団体では2.6%です。
民間企業の場合は、従業員43.5人につき障害者1人以上を雇用しなければなりません。
といっても、障害者の就業が困難な業種も存在します。
厚生労働省が発表した「令和3年障害者雇用状況の集計結果」によれば、下記に挙げるような業種では障害者雇用が進んでいません。
事業の性格上、障害のある方に適さない業種・職種であることがうかがわれます。
障害者の就業が困難とされる業種の例
※()内は法定雇用率達成企業の割合。産業全体の達成企業割合は47.0%。- 情報通信業(26.3%)
- 不動産業、物品賃貸業(31.9%)
- 学術研究、専門・技術サービス業(33.2%)
- 教育、学習支援業(36.0%)
- 卸売業、小売業(37.1%)
- 金融業、保険業(38.9%)
障害者の就業が困難な業種には、その雇用義務を軽減する除外率制度が設けられていました。
しかし、障害の有無にかかわらず自立して生活できる社会を目指す「ノーマライゼーション」の観点から2004年4月に廃止され、経過措置として段階的に除外率を引き下げていく対応がとられています。
2.現場の理解や環境整備が十分でない
障害のある方を雇用して安定的に就業してもらうには周囲の理解が不可欠です。
しかし、現場では障害者雇用をネガティブに受け止められてしまうケースもあり、採用に踏み切れない企業があることも否めません。
また、現場から障害者雇用への理解が得られたとしても、誰もが働きやすい環境を整備しておく必要があります。
例えば建物や施設がバリアフリー化されていなければ、障害のある方が安心して働くのは難しいものです。
このように、設備面の問題によって障害のある方を雇用できない、あるいは障害のある方が実質的に働けないといった企業があることにも留意しましょう。
3.障害者に任せられる仕事が見当たらない
障害のある方を雇用する以上は、何らかの業務を担当してもらうことになります。
しかし、障害のある方にどんな仕事を任せればよいのかわからないために、企業が雇用に踏み切れないケースもあるでしょう。
これは業種や職種によって障害者雇用率に差が出ていることにも関連します。
障害のある方を新たに雇用する際には、業務全体を見直して任せる仕事を創出しなくてはならない企業もあるでしょう。
障害の特性や業務経験の少なさから、効率的に業務を進めることが難しい場合も想定されます。
そのため、企業側は障害があってもスムーズに業務遂行できるよう業務の平準化に努め、フローを再構築したりマニュアルを作ったりする必要があります。
4.短期間で離職される可能性がある
障害者職業総合センターがまとめた「障害者の就業状況等に関する調査研究」では、就業継続支援A型を含む一般企業へ就職後の定着率が3ヶ月後80.5%、1年後61.5%という調査結果が出ています。
就業継続支援A型を除いた定着率は3ヶ月後で76.5%、1年後は58.4%です。
就業した障害者の半数近くが1年後に離職する統計結果を見ると、企業側が採用に懸念を持ってしまうのは無理のないところもあります。
しかし、離職は障害のある方だけに原因があるわけではありません。
環境整備の不十分さや業務のミスマッチなど、離職を避けるために企業側が改善できる部分も多々あるためです。
障害のある方の定着率を高めるには離職の原因に基づいた対策を講じていくことが重要であるといえます。
出典:「障害者の就業状況等に関する調査研究」(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター)
障害者がなかなか就職できない理由
障害のある方がなかなか就職できない場合、本人側には次の原因が考えられます。
障害者がなかなか就職できない理由
- 基礎スキル不足
- 自分の障害に対する理解が不十分
- 日常生活の管理不足
上記に該当するものがある場合、働ける準備がまだ整っていないのかもしれません。
もし就職できたとしても、何らかの支障が出てしまって長期的に働くことは難しいでしょう。
逆にいうと、これらの原因を解決すれば就職して安定的に働ける可能性が高まります。
以下、就職を妨げるそれぞれの原因を簡単に解説します。
1.基礎スキル不足
職種や業務によって基礎スキルの位置づけは異なりますが、多くの職場で求められるのはパソコンスキルとコミュニケーションスキルです。
パソコンスキルはマウスやキーボードを操作しておこなう入力作業のほか、文書作成ソフトやメールソフト、チャットソフトなどの基本的な業務アプリケーションが扱えれば問題ありません。
コミュニケーションスキルは同僚や上司とスムーズなやり取りをするために必要です。
自分の業務に関わる情報を聞きたいとき、あるいは重要事項を伝えたいときに、意思疎通がうまくできないと仕事に支障が出ますし、本人にとってもストレスになります。
2.自分の障害に対する理解が不十分
障害が理由で、業務内容によっては苦手に感じたり、時間がかかりすぎたりすることがあります。
企業と本人の両方にとって、仕事のミスマッチがあることは大きなロスです。
思うように仕事ができなければ職場が嫌になり、離職にもつながってしまいます。
したがって、自分の障害をよく理解して、業務による向き不向きを同僚や上司に伝えておくことが大切です。
就職する前には大丈夫だと思っていた業務が、実際にやってみたら大変だと感じる場合もあるでしょう。
働いてみて初めて、自分の障害への理解が深まる部分もあります。
就職後も自分の障害とよく向き合って、どんな業務が最適なのかを考えていきましょう。
3.日常生活の管理不足
就職するためには、日常生活を自分自身で管理できなければなりません。
規則正しい生活習慣が身に付いていなければ、所定の時間に遅刻してしまったり、行けなくなってしまったりするためです。
面接の際はもちろん就職してからも、時間が守れないことはマイナス評価につながります。
また、自分で健康管理ができるかどうかも重要です。
食事や入浴、睡眠などが適切に行えないと体調を崩すリスクが高まります。
就職しても頻繁に身体の具合が悪くなるようなら、働き続けるのは難しいでしょう。
障害者の現状の就職率は?
厚生労働省によると、2021(令和3)年度における障害者の就職率は42.9%で、前年度と比べて0.5%増えています。
就職件数も96,180件にのぼり、前年比7.1%増となりました。
障害者の就職率が上昇したのは、以下の業種を中心に多くの産業で求人数が増加したためです。
障害者の求人数が増加した業種の例
- 医療・福祉
- 製造業
- サービス業
ここ数年のコロナ禍で就職率の低迷が起こっていましたが、現状では底を脱したと考えられます。
これまで就職活動がうまくいっていなかった人も、今後の採用動向に期待してよいかもしれません。
障害者が就職活動を成功させるポイントは?
障害のある方が就職活動を成功させるためには、まず「どれくらい働く準備ができているのか」の確認を行うことが大切です。
そのうえで就職支援サービスを活用し、具体的な就職活動を進めます。
まだ一般企業で働くのが難しい場合も、あきらめる必要はありません。
就労や生産活動の機会を提供する「就労継続支援」という障害福祉サービスを利用しながら、就労に必要な知識や能力を身につけることができます。
それでは具体的に見ていきましょう。
1.働く準備ができているかを確認する
障害のある方が就労を希望する場合に、まず「働く準備がどれくらいできているのか」を確認することが重要です。
「就労準備性ピラミッド」を使って確認するのがよいでしょう。
就労準備性ピラミッドは働く上で必要とされる要素を優先順に並べたもので、次の5項目があります。
就労準備性ピラミッドの5項目
これらの項目を満たせているのなら、前述した「障害者がなかなか就職できない理由」のほとんどが解決できているともいえます。
簡易的な各項目のチェックリストを掲載しましたので、ぜひ確認してみてください。
(1)健康管理
- 自分の障害や特性を理解できている
- 必要に応じて休息することができる
- だいたい決まった時間に起床・就寝している
- だいたい決まった時間で1日3食をとっている
(2)日常生活管理
- 身だしなみを整えて清潔な状態でいられる
- 趣味など余暇の過ごし方を持っている
- 適切な金銭管理ができる
- 交通機関を利用できる
(3)対人スキル
- あいさつや返事ができる
- 状況に応じた言葉遣い、態度、マナーなどがわかる
- 相手の話を聞いて意図を理解できる
- 自分から話しかけて要件が伝えられる
(4)基本的労働習慣
- 目標や意欲を持って働ける
- 指示または手順どおりに作業ができる
- 指導や助言を受け入れられる
- 報告・連絡・相談ができる
(5)職業適性
- 一定の時間、集中して作業を続けられる
- 時間意識を持って正確に仕事をこなせる
- 業務に慣れれば作業効率が高められる
- 作業内容や手順などの変化に対応できる
2.働く準備ができたら就職支援サービスを活用する
チェックリストで働く準備ができていると確認できた人(20項目中16項目程度以上)は、以下に挙げる就職支援サービスを活用して就職を検討してみましょう。
主な就職支援サービス
- ハローワーク
- 就労移行支援事業所
- 障害者就業・生活支援センター
就職支援サービスを利用するメリットは、障害のある方に寄り添ったアドバイスやサポートを受けながら就職活動ができることです。
就職支援サービスを通じれば、障害者向け求人を出している企業も見つけやすくなります。
以下、それぞれの就職支援サービスについて説明します。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)では、誰でも無料で求人の紹介が受けられます。
もちろん障害のある方も例外ではありません。
むしろ専門の職員による就職支援が用意されています。
障害者雇用を中心に扱う障害者窓口で、面談や求人の紹介を受けることが可能です。
ハローワークの独自の取り組みとして
- 合同面接会
- ハロートレーニング(公共職業訓練)
- トライアル雇用
が行われています。
また、精神障害者雇用トータルサポーターとして、精神保健福祉士や臨床心理士の資格を持つスタッフも配置されています。
就労移行支援事業所
就労移行支援は就労を希望する65歳未満の障害者を対象に、就労に必要な知識や能力の向上、および就職をサポートする福祉サービスです。
就労移行支援事業所へ通うことで、スキル習得や就職活動の支援が受けられます。
就職した後も、職場に定着できるよう利用者をサポートしてくれます。
また、就職して長く働くために必要な「健康管理力」や「障害への対応力」を身につけることが可能です。
本人が希望する仕事への就労プランを事業所のスタッフに立ててもらうこともできます。
障害者就業・生活支援センター
障害就業・生活支援センターは、「なかぽつ」「就ぽつ」という通称でも呼ばれています。
就労を希望する障害者への就労相談や就職活動支援といった就業サポートと、生活面でのサポートを一体的に行う機関です。
障害者手帳を取得していなくても、障害が理由で就労や生活が困難な人であれば利用可能な場合があります。
ハローワークや地域障害者職業センターなどの関係機関との連絡調整、就職後には職場定着に向けた支援なども行ってくれます。
3.働くのが難しければ就労継続支援を利用する
障害や難病により一般企業等に雇用されることが難しい場合には、就労継続支援の利用対象者の要件を満たしていないか確認してみましょう。
就労継続支援は、一般企業等での雇用が困難な障害者に対して就労や生産活動の機会を提供する障害福祉サービスです。
就労継続支援を通じて就労に必要な知識・能力を身につけることで、一般企業に就職する道が拓けます。
就労継続支援にはA型・B型の2種類があり、それぞれ目的や対象者、雇用契約、賃金ルールが異っています。
▼就労継続支援A型・B型の違い
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
---|---|---|
目的 | 一般企業に雇用されることが困難で、雇用契約に基づく就労が可能な人に対し、就労の機会と生産活動の機会を提供する | 一般企業に雇用されることが困難で、雇用契約に基づく就労が困難な人に対し、就労の機会と生産活動の機会を提供する |
対象者 | 原則 18歳~65歳未満 | 年齢制限なし(就労移行支援事業を利用した結果、B型の利用が適当と判断された人を含む) |
雇用契約 | あり | なし |
賃金 | 給料が支払われる | 工賃(成果報酬)が支払われる |
障害者の就労をサポートしたい人へ
近年では、就労系の障害福祉サービスから一般企業へ就職する人が増えてきています。
厚生労働省の調査結果によれば、令和2年度は約2.2万人の障害者が一般企業に就職しました。
一般就労への移行者数の内訳を見ると、就労移行支援からの移行者が半数を占めており年々増加傾向にあります。
一方、就労継続支援A型・B型からの移行者数は停滞・低下しつつあるようです。
とはいえ、就労継続支援A型・B型の需要は高く、事業所数と利用者数は依然として増え続けています。
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