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2023.7.28
2023.7.12
放課後等デイサービスの閉所リスクは?つぶれる原因・生き残る条件を解説

放課後等デイサービスとは、障害のあるお子さんや発達に特性のあるお子さんが放課後や学校休業日に利用できる福祉サービスです。
厚生労働省のデータによると、放課後等デイサービスは2012(平成24)年の設置以来多くの企業が参入し、その数は2020(令和2)年の時点で全国1万5,000以上にのぼります(※)。
しかし、安定性が高いとされる放課後等デイサービスにも
- 法改正による経営悪化
- 人材不足
- 集客力不足
などによる閉所リスクがあることを忘れてはなりません。
そこで今回は、これから放課後等デイサービスを開業される方や既に運営されている方に、放課後等デイサービスが閉所に至る原因から、生き残るための対処方法、今後想定される動向までをわかりやすく解説します。
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目次
放課後等デイサービスがつぶれることはある?
結論からいうと、放課後等デイサービスであってもつぶれることはあります。
実際、2017(平成29)年4月1日に施行された放課後等デイサービスの指定基準の見直し以降は、人員配置基準を満たせない等の理由で閉所に至った事業所が少なからず見られました。
▼2017年4〜9月に廃止・休止した事業所の廃止・休止理由
廃止・休止した事業所数 | 児発管等の人員配置基準を満たせない | 利用児童が集まらない | 基本報酬の見直しの影響 | その他(事業所統合等) |
---|---|---|---|---|
369ヶ所 | 130ヶ所 | 52ヶ所 | 16ヶ所 | 174ヶ所 |
その背景とはどのようなものだったのでしょうか。
かつて障害児は未就学児と就学児が一緒に通う児童デイサービスに通所しており、2012(平成24)年の児童福祉法改正により未就学児が通う「児童発達支援」と、就学児が通う「放課後等デイサービス」に制度化されました。
新たに創設された放課後等デイサービスは、設置場所や職員の資格要件などの運営条件が比較的緩いうえ経営も安定しやすいと注目を集め、多くの事業所が作られました。
しかし、営利に走り支援の質が低い事業所や、テレビを見せるだけ、ゲームを渡して遊ばせるだけといった事業所も見られるようになりました。
そこで2017年4月に放課後等デイサービスの人員配置基準が見直され、以下の改正が行われました。
- 児童発達支援管理責任者(児発管)の資格要件の変更
実務要件に「障害児、障害者、児童分野での実務経験(3年以上)」を追加。 - 人員配置基準の変更
従業者の要件を「指導員または保育士」から、「児童指導員または保育士、障害福祉サービス経験者(2年以上)」に変更。そのうち、児童指導員または保育士を半数以上配置することとする。
どちらも既存事業所に対しては1年間の経過措置が設けられていましたが、見直しから約半年間で130ヶ所の事業所が人員配置基準に対応できず閉所・休所に至ったのです。
なお、現在も約4割の放課後等デイサービスが赤字を抱えているという厳しい状況にあります。
独立行政法人福祉医療機構が2020(令和2)年に公表した調査によると、放課後等デイサービスのうち37.4%が赤字経営であることがわかりました。
ただ、前年の2019(令和元)年度の赤字事業所が42.2%だった点を考えると、多少の改善がうかがえます。
放課後等デイサービスがつぶれる原因は?
放課後等デイサービスがつぶれる主な原因は以下の3つです。
- 法改正に対応できていない
- 必要な人員を確保できない
- 集客力が不足している
ここからは、放課後等デイサービスがつぶれる原因について、詳しく解説します。
1. 法改正に対応できていない
法改正に対応できず閉所する放課後等デイサービスは少なくありません。
3年に1度行われる児童福祉法における法改正では、主に基本報酬や加算・減算が改定されます。
たとえば、2018(平成30)年度の報酬改定では、手厚い支援を必要とする児童(指標該当児)の割合やサービス提供時間により、基本報酬が区分されるようになりました。
加えて「児童発達支援管理責任者選任加算」が基本報酬に組み込まれたことにより、実質的には基本報酬の引き下げとなり、人員や人件費の削減を迫られる事業所も見られました。
なお、来る2024年度にも法改正が予定されているため、なるべく早く情報を得て対策を行うことが重要です。
対策を取らないと、報酬加算の対象外になるおそれもあります。
2. 必要な人員を確保できない
放課後等デイサービスの人員配置基準を満たしていない状態でサービスを提供した場合、「人員欠如減算」の対象となるため注意してください。
人員欠如減算は、欠員している職員を配置するまで全利用者を対象に減算され、3ヶ月以上続けば報酬が半減してしまいます。
さらに自治体から指導が入った後も欠員が解消されない場合は事業所の休止勧告を受けることになるので、施設の運営自体が危ぶまれます。
放課後等デイサービスには、以下のような人員欠如減算があります。
- サービス提供職員欠如減算
-
サービス提供職員欠如減算とは、児童指導員または保育士の数が、基準に定められる人数を満たしていない場合に適用される減算のことです。
具体的には、減算開始から2ヶ月までは所定単位数の30%が、減算開始から3ヶ月を超えたら所定単位数の50%が減算されます。
欠員が人員基準の1割以上の場合は翌月から、欠員が人員基準の1割未満の場合は翌々月から減算開始となります。
- 児童発達支援管理責任者欠如減算
-
児童発達支援管理責任者欠如減算とは、児童発達支援管理責任者(児発管)が不在の場合に該当する減算のことです。
児童発達支援管理責任者欠如減算は、人員が欠如した翌々月から所定単位数の30%、5ヶ月目以降から所定単位数の50%が減算されます。
6ヶ月目以降は、人員を確保するまで所定単位の50%が減算され続けます。
- 個別支援計画未作成減算
-
個別支援計画未作成減算とは、放課後等デイサービスを利用する子どもたちの個別支援計画書の作成や、モニタリングを行っていないときに適用される減算です。
児童発達支援管理責任者が不在の事業所は、この個別支援計画未作成減算の対象にもなります。
なぜなら、児童発達支援管理責任者がいないと、個別支援計画の作成およびモニタリングができないからです。
個別支援計画未作成減算は、計画未作成月から所定単位数の30%が減算になり、3ヵ月目以降は、児童発達支援管理責任者が配置される前月まで所定単位の50%が減算されます。
なお、児童発達支援管理責任者が不在の場合は個別支援計画を作成できないため、新規の子どもは受け入れられません。
人材不足には、上記のような減算リスクのほか、採用コストがかかったり、人件費が上昇したりする懸念もあります。
さらなる赤字を招くケースも多いため、十分な対策が必要です。
3. 集客力が不足している
集客力が低い放課後等デイサービスは、閉所に至るおそれがあります。
放課後等デイサービスの利用代金の9割は公費で賄われているため、価格競争がなく、稼働率とともに収益も上がる仕組みになっているからです。
実際、放課後等デイサービスは利用ニーズが高い一方で参入事業者数も増えていおり、人口の多い地域では競争が激化しています。
質の高いサービスを提供していても、多くの人に認知されなければ利用者は集まりません。
利用者の口コミだけでは限界があるため、効率的かつ効果的な方法での集客力アップが求められます。
とはいえ、契約数を稼ぐことだけに注力してしまうと、結果的に提供するサービスの質が低下したり、学校や保護者との連携が悪くなったりして利用者が集まらなくなるケースもあるので注意しましょう。
放課後等デイサービスで生き残るための対処方法
放課後等デイサービスで施設運営を継続するためのポイントは、
- 質の高い支援を提供し差別化を図ること
- 取得できる加算はすべて取ること
- 採用した人材を定着させること
- コツを押さえた集客活動を行うこと
の3つです。
ここからは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
1. 質の高い支援を提供し差別化を図る
放課後等デイサービスが生き残るためには、質の高い支援を提供することが大切です。
そのことを示すように、2021(令和3)年度の法改正・報酬改定では、利用者一人ひとりの個性に合わせた専門性の高い支援を行う事業所が評価されるようになりました。
具体的には、
- 難聴児の早期サポートに対応するため、児童指導員等加配加算の対象資格に「手話通訳士」と「手話通訳者」が追加されたこと
- サービスの質を向上させるため、専門職を常勤換算で1人以上配置した場合に算定できる「専門的支援加算」が創設されたこと
が挙げられます。
また、放課後等デイサービスとして生き残るためには、他の事業所との違いをアピールし、集客を図ることも重要なポイントです。
放課後等デイサービスの差別化には、以下のような対策があります。
- 送迎サービスを行う
- コンセプトをしっかり設計する
- 特色のある療育プログラムを行う
- 専門性の高い人材を採用する
- 個別療育プログラムを実施する
- 保護者向けの子育て相談会を行う
- 学校や保護者との連携を密にする
- 平日だけでなく土日も営業する
2. 取得できる加算はすべて取る
放課後等デイサービスで適正な利益を確保するには、取得できる加算をしっかりと取っていくことも必要です。
加算を取るのは難しいと思われがちですが、まずは以下の加算を取ることから始めてみましょう。
▼放課後等デイサービスが積極的に取得すべき加算の例
加算 | 単位 |
---|---|
児童指導員等加配加算 | 理学療法士等:187単位/日 児童指導員等:123単位/日 その他従業者:90単位/日 |
専門的支援加算 | 187単位/日 |
送迎加算 | 障害児:54単位/回 重症心身障害児:37単位/回 |
欠席時対応加算(Ⅰ)(Ⅱ) | 94単位/1回 ※欠席児対応加算(Ⅰ)は月に4回まで(重心児は月8回まで) |
家庭連携加算 | 1時間未満:187単位/回 1時間以上:280単位/回 |
強度行動障害児支援加算 | 155単位/日 |
児童福祉法は3年に1回改正され、それに伴い報酬体系も改定されます。
情報収集を怠らず、フレキシブルに対応していくことが、法改正に左右されない強い組織づくりにつながります。
3. 採用した人材を定着させる
放課後等デイサービスの安定した施設運営のためには、スタッフの定着率を上げることも欠かせません。
人員が不足するとサービスの質の低下を招くだけでなく、基本報酬が減算されるため施設の閉所リスクが高まります。
また、今後も少子化や報酬改定によって、さらに人材の確保が厳しくなることが予想されます。
放課後等デイサービスを経営する際は「離職してもすぐ採用すればよい」と考えるのではなく、人材を定着させることに力を入れましょう。
人材の採用・定着のために、 頭に入れておきたい点は以下の通りです。
- 採用・面接前の施設見学を可能とする
- ホームページを充実させる
- 評価制度を導入し評価基準を明確にする
- 業務マニュアルを作成する
- 定期的に面談を行う
- スタッフのメンタル管理
- スタッフ間における人間関係の把握
- 資格取得のためのサポートを行う
- 定期的な研修の開催
- 明確なキャリアプランを準備する
4. コツを押さえた集客活動を行う
放課後等デイサービスには、ポイントを押さえた集客活動が不可欠です。
特に人口の多い地域では施設間の競争が激化しているため、まずは事業所の認知度を上げなくてはなりません。
集客活動の一例を以下で紹介します。
- SNSを活用する
- Googleビジネスプロフィールへの登録(MEO対策)
- 見学・体験会を行う
- 地域イベントの開催
- 保護者を対象とした育児相談会の実施
- 質の高いスタッフの在籍をアピールする
- 相談支援事業所への営業活動
放課後等デイサービスのコロナ破綻は多い?
放課後等デイサービスのコロナ破綻は、他の業種に比べるとそう多くはありません。
そのことを示すように、厚生労働省が公表した「令和3年版労働経済の分析—新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」によると、2020年に新型コロナウイルスの影響で倒産した事業所792件のうち、医療・福祉の事業所は最も少ない14件でした。
放課後等デイサービスの場合、通常の運営ができない場合にも電話や訪問等でサービス提供することが認められており、これらの代替的なサービスでも報酬が算定されます。
そのほか、新型コロナウイルスに関連した理由から定員を超過して児童を受け入れた場合や、やむを得ず人員基準を満たせなかった場合にも減算しないという対策が取られました。
そのお陰で、新型コロナウイルス関連破綻を逃れた放課後等デイサービスが多かったと考えられます。
しかし、放課後等デイサービスの人材不足は現在も継続中です。
実際、2022年11月時点の未充足求人がある事業所の割合を示したデータでは、医療・福祉分野は71%と最も高い結果となっています。
コロナ破綻は逃れたものの、人材不足で苦しい経済状況に陥っている事業所も少なくないでしょう。
2024年に法改正を控える放課後等デイサービスの今後は?

2024年に行われる予定の法改正で、放課後等デイサービスは、
- 2024年に行われる予定の法改正で、放課後等デイサービスは、
- 理学療法など専門性の高い療育を行う「特定プログラム特化型(仮)」
の2類型に再編される方向で検討が進められています。
この改正によって、「専門性の高い有効な発達支援」と判断できないサービスは、給付の対象外となるかもしれません。
見守りだけ・学習支援のみ・ピアノや絵画の指導などを行っている放課後等デイサービスは、対策が必要です。
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また、合同研修には、同じ志をもつメンバーと出会えるメリットがあります。
開業前に情報交換をしたり事業運営を相談したりできる仲間がいることは、今後大きな強みとなるでしょう。
さらに、開業後のロイヤリティが一切ないのも、ミライクスの放課後等デイサービス実践講座が多くの方に選ばれているポイントです。
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参考文献・URL
- 「障害児通所支援の現状等について」(厚生労働省)
- 「放課後等デイサービスの運用状況について」(厚生労働省)
- 「2018年 児童系障害福祉サービスの経営状況について」(独立行政法人福祉医療機構)
- 「2020年度(令和2年度)児童系障害福祉サービスの経営状況について」(独立行政法人福祉医療機構)
- 「児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要」(厚生労働省)
- 「放課後等デイサービスの現状と課題」小澤温(2018) 『小児保健研究』77(3),p227-229
- 「放課後等デイサービスの実態把握及び質に関する調査研究報告書」(厚生労働省)
- 「2018年度報酬改定に関わる放課後等デイサービスの実態と課題―京都府内の事業所を対象とする質問紙調査から―」丸山啓史(2019) 『京都教育大学特別支援教育臨床実践センター年報』9
- 「障害児通所支援に係る指定基準等の見直しについて」(愛媛県)
- 「令和3年版 労働経済の分析 —新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響—」(厚生労働省)
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執筆者
ミライクス運営事務局