事業を探す
2023.8.18
2023.7.12
放課後等デイサービス経営者の年収はどれくらい?収益を上げるポイント・将来性も解説
放課後等デイサービスを開業したいと考えている方の中には、経営者としての報酬や将来性が気になって、なかなかスタートの一歩を踏み出せない方も多いでしょう。
結論からいえば、放課後等デイサービスの経営者には、400〜500万円ほどの年収を得ている方が多いといわれます。
利益率が高く給付金収入は非課税という放課後等デイサービスの収益性の良さが、経営者の年収に反映されているのかもしれません。
この記事では、放課後等デイサービス経営者の年収や儲かる理由、収益を上げるポイントについてお伝えします。
放課後等デイサービスの開業を検討していて、年収や利益について気になっている方は、ぜひ読んでみてください。
目次
放課後等デイサービス経営者の年収は?
放課後等デイサービスの経営者の年収は400~500万円が相場です。
年収400〜500万円は、レストランやカフェ、バーの経営者年収と同等か上回る水準といわれます。
ただし、経営者の年収は、事業所の収益率や役員報酬の設定などによって異なるのが実情です。
他の事業と兼業している経営者では、放課後等デイサービスの役員報酬をゼロにして、他事業からしっかり報酬を得ているケースもあります。
5施設以上経営すれば、年収1,000万も夢ではありません。
放課後等デイサービス経営者が儲かる理由
放課後等デイサービス経営者の年収が比較的高い理由として、以下の4点が挙げられます。
- 開業資金が低め
- 利益率が高い
- 安定性がある
- 将来性がある
続いては、それぞれのポイントについて詳しく解説します。
開業資金が低め
放課後等デイサービスを開業するだけならば500万円から可能です。
▼放課後等デイサービスの初期費用の例
項目 | 費用の目安 |
---|---|
法人設立 | 30万円 |
物件取得(賃貸契約)・内装施工 | 100万円+150万円=250万円 |
送迎車(購入の場合) | 100万円程度 |
人員採用 | 50万円 |
利用者募集 | 10万円程度 |
備品(家具や遊具など) | 30〜50万円程度 | 合計 | 470〜490万円 |
開業後、最初の給付金が入金されるまで約3ヶ月間の運転資金を含めても、1000万円程度の資金があれば開業できます。
小資本で始められるのは、
- 在庫を抱える必要がない
- 外装・内装の工事費用が低い
- 高額な設備・備品が不要
といった理由によるものです。
加えて、初期費用を抑える方法もいろいろあります。
開業資金として最もボリュームが大きい物件関連も、既存の設備をそのまま使える物件を見つけられれば、ぐんとコストダウンできます。
送迎用車両も必要ですが、まずはリースでの利用にすれば初期費用を抑えられ、1台あたり月々2、3万円程度から利用できます。
求人費も、スカウト型採用やハローワークを活用すれば、多額の費用はかかりません。
事務用品や家電も、質・程度の良いリサイクル品を取り入れるなど、工夫次第でカットできます。
ちなみに、日本政策金融公庫の調査によると、さまざまな業種における新規開業費用の平均は941万円でした(※)。
比べてみると、放課後等デイサービス開業は比較的コストを抑えられるとわかります。
出典:「2021年度新規開業実態調査」(日本政策金融公庫総合研究所)
利益率が高い
放課後等デイサービスの利益率は、平均で15〜20%です。
稼働率が100%の放課後等デイサービスならば、利益率3割以上も夢ではありません。
放課後等デイサービスの売り上げは、1割が利用者負担で9割が障害児通所給付金という公費でまかなわれます。
公費部分の報酬は、厚生労働省によって定められた「単位」で計算され、基本的には1単位=10円です(※)。
※地域区分により異なります。
報酬額は、単価×利用者数×利用日数によって決まります。
例を挙げると、以下のような報酬を得られる計算です。
▼放課後等デイサービスの1日あたり報酬額
1人あたりの報酬額 | 稼働率100%(10名)の場合 | 稼働率40%(4名)の場合 | |
---|---|---|---|
授業終了後 | 8,350円 | 83,500円 | 33,400円 |
休業日 | 9,520円 | 95,200円 | 38,080円 |
1日あたりの報酬額は、授業終了後604単位または休業日721単位に、児童指導員等加配加算123単位と送迎加算(Ⅰ)往復108単位を加え、1単位=10円で算出した金額です。
稼働率100%の事業所で、授業終了後に23日、休業日に4日利用した月ならば、報酬額は以下のようになります。
放課後:83,500円×23日=1,920,500円
休校日:95,200円×4日=380,800円
合計:2,301,300円
ひと月で約230万円ならば、年商約2,760万円になります。
安定性がある
先にお伝えしたように、放課後等デイサービスの収入の9割は国からの給付金です。
請求と入金のフローは以下のように決まっています。
このようにサービス提供の翌月上旬に請求を行うと、翌々月の中旬頃には国保連から報酬額が支払われる流れです。
利用者負担分については、サービス提供の翌月中旬ごろに児童の保護者へ請求内容を知らせます。
債権リスクがほとんどなく安定性があることは、放課後等デイサービスの経営にとって大きなメリットです。
将来性がある
放課後等デイサービスは、2012(平成24)年から2020(令和2)年にかけて事業所数が約6倍に、利用者数も約5倍に増加しています。
また、昨今のコロナ禍では、休校などによる児童の預け時間が増えたことも放課後等デイサービスの売り上げアップに寄与しました。
厚生労働省の資料によれば、通級による指導を受けている児童生徒数は年々増加しています。
しかし、児童1,000人あたりの放課後等デイサービスの事業所数は、都道府県による差が大きい状況です。
令和元年度のデータでは、最も多い沖縄県(2.06事業所)と最も少ない新潟県(0.67事業所)に3倍以上の差があり、放課後等デイサービスが十分に行き届いていない地域の存在がうかがえます。
そのような状況から、今後も良質な放課後等デイサービスの普及が望まれていると考えられます。
経営者にとっても、放課後等デイサービスは将来性がある事業といえるでしょう。
なお、放課後等デイサービスを含む障害児通所支援は2023年4月より「子ども家庭庁」に移管される予定です。
放課後等デイサービスで収益を上げるポイント
では、放課後等デイサービスでできるだけ収益を上げるには、どうしたら良いのでしょうか。
収益を追求するビジネスモデルではありませんが、下記のようにいくつかのポイントがあります。
- 質の高いサービスを提供する
- 積極的に加算を獲得する
- 人材を定着させる
続けて、具体的に解説しましょう。
質の高いサービスを提供する
放課後等デイサービスの数が年々増えているため、地域によっては事業所の競争が激しくなっています。
そのようなところでは、特徴がない事業所には残念ながら利用者が集まりにくいでしょう。
また、法改正や報酬改定によって、一人一人の利用者に対して質の高い支援を行う事業所が高い評価=高い報酬を受ける仕組みに変わってきています。
たとえば「医療的ケア児」の基本報酬区分が創設されたことも、報酬体系の変更の一つです。
医療的ケア区分が高いほど看護職員の配置を手厚くする必要がありますが、その分報酬単価が高くなります。
また、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった専門職を配置し、専門的な支援を行う事業所は「専門的支援加算」を算定できるようになりました。
開業に当たっては、どのようなコンセプトで児童に療育を行うのか、その設計が必要です。
そのうえで、特色のある療育プログラムを組み、スタッフの質を上げるなど、ほかの事業所との差別化を図ることが大切です。
積極的に加算を獲得する
放課後等デイサービスの報酬は、法律で決められた加算をしっかりと獲得することで確実に増やしていけます。
「加算を取るのが難しい」と考えている経営者の方もいるかもしれません。
そのような方にまずおすすめしたいのが「児童指導員等加配加算」です。
人員配置基準を満たしたうえで、たとえば保育士の資格を持つ方を常勤換算で1名以上配置すると、児童指導員等加配加算を算定できます。
▼児童指導員等加配加算
加配の区分 | 単位 |
---|---|
理学療法士等(専門職員) | 187単位 |
児童指導員等 | 123単位 |
その他の職員 | 90単位 |
※定員10人以下の場合
続いておすすめしたいのが、理学療法士や言語聴覚士、作業療法士、さらに心理担当職員などの専門スタッフを常勤換算で1名以上配置して得られる「専門的支援加算」です。
専門的支援加算を算定した職員に対しては児童指導員等加配加算を算定することはできません。
リハビリテーションの専門職を採用すると、加算が得られるだけではなく、児発管が個別支援計画を作成する際にも助けとなってくれるでしょう。
▼専門的支援加算
加配の区分 | 単位 |
---|---|
理学療法士等 | 187単位 |
さらに、スタッフが普通免許を持っているならば、児童の送迎をして「送迎加算」を取るのも得策です。
付与される単位は54単位と多くはありませんが、加算できるポイントはしっかりと取っていくことが大切です。
▼送迎加算
加配の区分 | 居宅等と事業所間 | 事業所と同一敷地内 |
---|---|---|
障害児 | 片道54単位 | 所定単位数の70% |
重症心身障害児 | 片道37単位 | 所定単位数の70% |
人材を定着させる
スタッフが離職してしまうと、一時的ではあっても人員配置基準を満たせなくなります。
そうなれば基本報酬が減算され、事業所の売り上げが減少してしまいます。
新たなスタッフをすぐに採用できればよいですが、そうとは限らないことも問題です。
求人広告費用がかかるだけでなく、抜けたスタッフの穴埋めのためにほかのスタッフが残業しなければならないかもしれません。
そうなると、労働環境が悪くなったと感じて辞めるスタッフが続く可能性もあり、まさに悪循環です。
以下のような工夫でスタッフの定着率を上げられるように努めましょう。
- 業務マニュアルを用意する
- IOTの活用
- 従業員同士のコミュニケーションが円滑に行われるように気を配る
- 評価制度の導入
業務の効率化でスタッフの負担を減らすこと、そしてストレスが少なくモチベーションを維持できる環境を作ることが大切です。
無資格・未経験でも放課後等デイサービスを開業できる?
放課後等デイサービスを開業するにあたって、経営者が福祉分野において有資格または経験者である必要はありません。
法律で定められた人員配置基準に沿って、児童発達支援管理責任者や児童指導員、保育士などを採用し、配置すれば問題なく開業できます。
スタッフとして福祉のプロを配置すれば、オーナーは施設経営に専念できます。
放課後等デイサービスは、起業家精神に富んだ方に向いている事業です。
放課後等デイサービスの経営を検討しているならば、まずは研修型コンサルティングを受けてみるのがおすすめです。
ミライクスの放課後等デイサービス実践講座ならば、開業後の経営を見据えた準備ができます。
個別のコンサルティングも受けられ、開業後のロイヤリティもありません。
実際に開業された方の85%が、受講から1年以内に開業されています。
興味のある方は、ぜひ一度無料セミナーにお越しください。
- 「2020年度(令和2年度)児童系障害福祉サービスの経営状況について」(独立行政法人福祉医療機構)
- 「令和2年障害福祉サービス等経営実態調査結果」(厚生労働省)
- 「令和3年度報酬改定における医療的ケア児に係る報酬(児童発達支援及び放課後等デイサービス)の取扱い等について」(厚生労働省)
- 「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(厚生労働省)
- 「障害児通所支援の現状等について」(厚生労働省)