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2023.11.11
2023.10.25
就労継続支援B型の人員基準は?減算にならないための常勤換算のポイントも解説
定員20名の就労継続支援B型を健全に運営するために、最低限必要となる従業員数はわずか4名です。
管理者がサービス管理責任者を兼任すると仮定し、ほかに必要な職種は生活支援員と職業指導員が1名ずつです。
さらに、生活支援員または職業指導員がもう1名いれば人員基準を満たせます。
ただし、常勤換算の考え方をしっかりと理解しておかないと、思わぬミスで減算対象となってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
この記事では、就労継続支援B型の人員基準や常勤換算のポイント、利用者数の計算方法について解説します。
目次
就労継続支援B型の人員基準
就労継続支援B型の人員配置基準は、利用者と従業員(職業指導員、生活支援員)の比率により、2パターンあります。
利用者と従業員の比率 | 必要な職員数 |
---|---|
7.5:1の場合 | 利用者7.5名に対して職員(職業指導員、生活支援員)1名の配置が必要 |
10:1の場合 | 利用者10名に対して職員(職業指導員、生活支援員)1名の配置が必要 |
選ぶ比率により、事業者が受け取れる給付金が変わります。
利用者に対して、より手厚いサービスを提供できる7.5:1の方が、事業者が受け取れる報酬が高いです。
人員配置基準に基づく職員配置は、下記のとおりです。
▼就労継続支援B型の人員配置基準
職種 | 配置人数 | 常勤の有無 |
---|---|---|
管理者 | 1名 ※兼務可 | なし |
サービス管理責任者(サビ管) | 利用者数60名以下:1名以上 利用者数61名以上:1名+60名を超えて40またはその端数を増すごとに1名増 |
あり ※1名以上 |
職業指導員 |
|
あり ※1名以上 |
生活支援員 |
サービス管理責任者(サビ管)の配置人数が少しわかりにくいかもしれませんので、具体的な数字を例に挙げてみましょう。
利用者数が61名ならば、サビ管は2名必要です。
利用者数が100名まではサビ管2名でよいですが、101名になったらサビ管は3名必要となります。
続いては、就労継続支援B型に必要な職種について、それぞれ解説します。
管理者
管理者は、施設長として事業所にかかわること全般を一元的に管理する役目を負っています。
また、業務が法令や基準にのっとって遂行されるように指導することも、管理者の大切な役割です。
資格要件は、下記のとおりです。
- 社会福祉法第十九条のいずれかに該当する/li>
- 社会福祉主事事業に2年以上従事した経験がある/li>
- 企業経営の経験がある/li>
- 上記と同等以上の能力を持つと認められる者である
「社会福祉法第十九条のいずれか」とうたわれている内容のひとつが、社会福祉主事任用資格を持っていることです。
自治体によっては、社会福祉施設長資格認定講習課程を修了していることを要件として加えているところもあります。
管理業務に支障のない範囲で、サービス管理責任者や職業指導員、生活支援員とも兼務できますが、例外や兼務を認めていない自治体もあるので、都度確認が必要です。
サービス管理責任者(サビ管)
サービス管理責任者は、事業所が提供するサービス全般の責任者です。
個別支援計画の作成・定期的な見直しを行い、新たな支援が必要であれば実施の手配をします。
同時に、使用者の心身状況を把握する役割も担います。
スタッフの技術指導のほか、利用者が使っている他サービスや関連機関との連絡・調整も仕事のひとつです。
資格要件は下記のとおりで、すべてを満たす必要があります。
- 特定の分野や職種における3~8年の実務経験
- 相談支援従業者初任者研修(講義部分の一部)の受講
- サービス管理責任者等基礎/実践/更新研修の受講
サービス管理責任者は、事業所ごとに1名以上は常勤で従事する必要のある職種です。
配置人数は先にお伝えしたとおりで、定員60名以下の事業所ならばサービス管理責任者は1名必要で、利用者が多くなればその数に応じてサービス管理責任者の必要数も増えます。
原則として、1人目のサービス管理責任者には常勤専従であることが求められますが、業務に支障がない場合のみ管理者との兼務が可能です。 また、職業指導員や生活支援員といった直接処遇職員の手伝いは可能ですが、勤務表に組み込んだり常勤換算したりすることはできません。
ただし、自治体によっては兼務のルールが異なる場合があるので、確認のうえ人員が欠如しないように注意しましょう。
職業指導員/生活支援員
職業指導員は、利用者が事業所でスムーズに生産活動ができるように指導する役割を担います。
事業所が扱う商品・サービスに応じて、利用者に生産活動に必要な知識・技術や作業手順を指導します。
生活支援員は障害者の自立をサポートする役割を担っています。
身の回り・生活における支援や生産活動を通したスキルアップ、その他利用者の不安や困りごとに対する相談業務に対応するのが仕事です。
職業指導員も生活支援員も、法令で定められた資格要件はありません。
しかし、より質の高いサービス提供を目指す事業所では、社会福祉主事任用資格や社会福祉士の資格を求めることもあるようです。
また、職業指導員については、事業所が提供するサービスや製品についての知識、最低限のパソコンスキルが必要となる場合もあります。
必要な配置人数についても、職業指導員と生活支援員は同じ基準のもとで運用されています。
先にもお伝えしたとおり、
- 1事業所につき職業指導員と生活支援員がそれぞれ最低1名ずつ必要
- 利用者10名または7.5名につき職業指導員または生活支援員が1名必要
となります。
兼務については、状況によって可否が異なりますが、同一法人で複数事業所を運営している場合にA事業所とB事業所にまたがっての兼務が可能な自治体もあります。
就労継続支援B型の人員配置の計算方法
就労継続支援B型事業所に必要な人員数を計算するには、以下の2点についての理解が必要です。
- 利用者数の計算方法
- 常勤・常勤換算の考え方
続いて、解説していきます。
利用者数の計算方法
就労継続支援B型事業所の人員配置を考えるためには、利用者数を計算する必要があります。
まず、前提として利用者数とは「前年度の平均利用者数」を指すことを知っておいてください。
新規開業して、まだ前年度の実績がない事業所については、下記のように利用者数を算出することになっています。
▼平均利用者数の算出方法
指定からの経過期間 | 平均利用者数の算出方法 |
---|---|
新規指定から6ヶ月未満 | 利用定員の90% |
指定から6ヶ月以上1年未満 | 直近6ヶ月間の平均利用者数 |
指定から1年以上で、前年度の実績がない | 直近1年間の平均利用者数 |
指定から1年以上で、前年度の実績がある | 前年度の平均利用者数 |
「直近6ヶ月間の平均利用者数」とは、直近6ヶ月間の利用者総数を同じ期間の開所日数で割った数です。
同じように、「直近1年間の平均利用者数」は直近1年間の利用者総数を同じ期間の開所日数で割った数となります。
たとえば、令和3年11月1日に指定を受けた事業所の場合、令和4年10月31日で指定から1年経ちますが、年度で考えるとまだ丸1年分の実績がありません。
令和5年3月31日になってようやく前年度実績ができるので、令和5年4月からは前年度実績に基づいて人員配置を考えられるようになります。
利用者数の算出方法がわかったところで、続いては配置人数について見てみましょう。
例えば、新たに定員20名の就労継続支援B型事業所を開設すると仮定します。
その場合に必要な従業員の数は、以下のように計算します。
定員20人×0.9=18人……新規指定から6ヶ月未満のため、利用者数は定員の90%で計算
就労継続支援B型の基本報酬には4つの区分があり、利用者7.5名に対して職業指導員または生活支援員1名を配置すると「サービス費(Ⅰ)」「サービス費(Ⅲ)」のいずれかを算定できます。
利用者10人に対して職業指導員または生活支援員1名を配置する場合は「サービス費(II)」「サービス費(Ⅳ)」となります。
定員20人で開設した就労継続支援B型事業所の場合、それぞれの場合ごとに必要な人員は下記のとおりです。
- 7.5:1の場合
- 18÷7.5=2.4
職業指導員と生活支援員が、常勤換算で合計2.4人必要
- 10:1の場合
- 18÷10=1.8
職業指導員と生活支援員が、常勤換算で合計1.8人必要
実際には、小数点分の人員は雇えませんよね。
そこで、次のキーワード「常勤換算」についての理解が必要となります。
常勤・常勤換算の考え方
「常勤」とは事業所が決めた所定労働時間(フルタイム)で働くことです。
一般的にフルタイムといえば40時間のところが多いですが、事業所によっては32時間のところもあります。
「常勤換算」は事業所の従業員が働いた合計時間を、常勤の従業員の働きに換算する計算方法です。
従業員の勤務時間の合計を、所定労働時間で割って算出します。
定員20名で新規開業する就業継続支援B型事業所の所定労働時間が週5日40時間だと仮定します。
就労継続支援B型サービス費ⅠまたはⅢを算定する場合、職業指導員・生活支援員の必要人数は2.4名となります。
常勤換算で人員基準を満たせるかどうかを2つの例で確認してみましょう。
- 職業指導員A:週40時間(8時間×5日)勤務……40÷40=1人
- 職業指導員B:週16時間(4時間×4日)勤務……16÷40=0.4人
- 生活支援員A:週32時間(8時間×4日)勤務……32÷40=0.8人
- 生活支援員B:週16時間(8時間×2日)勤務……16÷40=0.4人
この4名全員分を合計すると、常勤換算で2.6人となります。
人員基準で必要な人数は2.4人なので、この人員配置ならば基準クリアです。
では、続いてもう一つ例を挙げてみましょう。
- 職業指導員A:週40時間(8時間×5日)勤務……40÷40=1人
- 生活支援員D:週25時間(5時間×5日)勤務……25÷40=0.625人
- 生活支援員E:週20時間(4時間×5日)勤務……20÷40=0.5人
まず、生活支援員Dの常勤換算計算結果が0.625人となっていますが、小数点第2位以下は切り捨てるルールとなっているため、0.6人とします。
そのうえでスタッフ全員分を合計しても、常勤換算で2.1人となり、必要な2.4人には及びません。
この例では人員欠如減算されてしまうリスクがあるので、生活支援員DまたはEの勤務時間を増やすか、さらにスタッフを雇い入れる必要があるという判断になります。
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