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2023.11.18
2023.10.25
共生型サービスとは?対象や指定基準をわかりやすく解説
共生型サービスとは、介護保険サービスと障害福祉サービスを同じ事業所で提供できるサービスで、2018年から運用されている制度です。
介護保険・障害福祉どちらかの事業所として指定を受けていれば、一定の条件を満たすことで別サービスの事業所指定を受けやすくなります。
経営の多角化によって収益力を強化できるのが共生型サービスのメリットといわれていますが、共生型サービスを運営する事業所はまだ少ないのが現状です。
この記事では、共生型サービスのメリット・デメリットや指定基準・報酬体系など事業所開設に必要な情報について解説します。
目次
共生型サービスとは?
共生型サービスとは地域包括ケアシステムを強化する取り組みの一環として、障害児・障害者と高齢者が同じ事業所でサービスを受けやすくするためのサービスです。
介護保険法と障害者総合支援法の両方に設けられた制度で、類似するサービスであれば事業者指定の手続きも簡略化されます。
例えば、放課後等デイサービスと生活介護を提供する障害福祉サービス事業所であれば、介護保険法としての指定基準を満たしていなくても介護保険の通所介護事業所を運営できます。
同じスタッフが障害福祉・介護保険両方のサービスを担当するため、利用者の特性を熟知した上で長期的にサービスを提供できるのが特徴です。
さらに、事業所全体として必要な人員を確保すればよいので、人口の少ない地域でも持続的な事業所経営を実現できるでしょう。
共生型サービスが生まれた背景
共生型サービスが生まれた背景は、持続的に介護福祉サービスを提供して地域共生社会を実現することです。
公的な支援制度は、児童・障害者・高齢者などの対象者ごとに整備が進められています。
しかし、65歳以上(特定疾病の場合は40歳以上)の障害者については介護保険の給付が優先されるのが原則です。
そのため、加齢や疾病によって使い慣れた障害福祉サービス事業所を利用できなくなり、利用者のニーズ・特性に合った支援が途切れてしまう課題が浮上しています。
年齢や対象者の枠組みを超えて、心身のケアはもとより地域の中で自分らしく暮らす支援を提供する方法として共生型サービスが注目されています。
また、共生型サービスは人口の少ない地域でも持続的に障害福祉・介護保険のサービスを提供するために有効です。
高齢者・障害者向けのサービスが提供されていても障害児向けのサービスがないという地域もあり、子育て面での課題も生じています。
一方、人員基準や採算などの兼ね合いで、支援ニーズがあっても事業所の設置を躊躇する事例もあるようです。
事業所の多角化を制度面でバックアップして、介護福祉サービスの地域格差を解消しようというねらいもみられます。
都市部においても、近年深刻化している介護福祉人材不足への対策に効果を発揮するでしょう。
共生型サービスのメリット・デメリット
共生型サービスが利用者・事業所にもたらすメリット・デメリットを紹介します。
利用者 | 事業者 | |
---|---|---|
メリット |
|
|
デメリット |
|
|
利用者のメリット・デメリット
年齢や障害の状態にかかわらず、同じ事業所を利用し続けられるのが利用者にとってのメリットです。
利用するサービスの種類が変わっても職員との人間関係・愛着関係を保てるため、心身の状態が安定する効果も期待できます。
ただし、障害児・障害者の支援経験が少ない職員がケアを担当する可能性がある点がデメリットになり得ます。
定員の兼ね合いで同年代の利用者がいない可能性がある点にも注意が必要です。
事業者のメリット・デメリット
障害福祉サービスの事業所指定を受けていれば、対象となる介護保険サービスの事業所指定を受けやすくなるため、事業所の多角化によって収益を拡大できる可能性があるのがメリットです。
複数のサービスを同じ事業所で提供するため、人員の総数を抑えながらサービス対象者の範囲も広げられます。
一方、利用者と関わる期間が長期化するため、適切なケアを提供するためには馴れ合い関係を防ぐことが大切です。
介護保険・障害福祉サービス両方の知識を身に付ける体制の整備も必要となります。
共生型サービスの対象
障害福祉サービスと介護保険サービスで共通する分野であれば、共生型サービス事業所の対象になります。
放課後等デイサービスと介護保険の訪問介護というように、分野が異なるサービスの場合は独立した事業所として指定申請することになるのでご注意ください。
共生型サービスの対象となるサービスの組み合わせを紹介します。
▼共生型サービスの対象となるサービス
介護保険サービス | 障害福祉サービス等 | ||
---|---|---|---|
訪問系サービス | 訪問介護 | ⇔ 相互に対応 |
|
デイサービス |
|
⇔ 相互に対応 |
※いずれも、主に重症心身障害児・重症心身障害者を通わせる事業所を除く |
療養通所介護 | ⇔ 相互に対応 |
※いずれも、主に重症心身障害児・重症心身障害者を通わせる事業所に限る |
|
ショートステイ |
|
⇔ 相互に対応 |
短期入所 |
訪問・通所・宿泊を一体的に提供するサービス |
|
→ 訪問 |
|
→ 通所 |
|
||
→ 宿泊 |
短期入所 |
放課後等デイサービス事業所や児童発達支援事業所の場合は、共生型サービスとして生活介護事業所も運営可能です。
同様に、生活介護事業所は共生型サービスとして放課後等デイサービス事業所や児童発達支援事業所も運営できます。
共生型グループホームとは、認知症高齢者グループホーム(※1)と障害者グループホーム(※2)を同じ敷地内に整備したグループホームです。
共生型サービスには含まれていませんが、介護保険法や障害者総合支援法の枠組みの中で、宮城県と富山県で先行整備が進められています。
入居者や地域住民との交流を深めながら、住み慣れた地域で暮らすための支援を提供できる施設として注目されています。
※1 介護保険サービスの「認知症対応型共同生活介護」
※2 障害福祉サービスの「共同生活援助」
共生型サービスの指定基準
共生型サービスは、障害福祉サービスと介護保険サービスの両方を運営しやすくするねらいで指定申請手続きに特例が設けられています。
人員配置基準と設備基準については、現在運営している事業所の基準のままで問題ありません。
一方、運営基準については提供するサービスごとに定める必要があります。
共生型サービスの人員配置基準
共生型サービスの人員は、もともと運営しているサービスの定員を基準に配置します。
例えば、定員20名の通所介護事業所(介護保険)が共生型サービスとして放課後等デイサービスの利用者を5名受け入れる場合でも、定員20名の通所介護事業所としての人員配置基準が適用されます。
人員の配置例は以下のとおりです。
▼定員20名の通所介護事業所の人員配置の例
職種 | 人数 | 備考 |
---|---|---|
管理者 | 1人 | 常勤・専従が必須 |
生活相談員 | 1人 | サービス提供時間を通じて配置が必要 |
看護職員 | 1人 | 訪問看護ステーションや医療機関と密接かつ適切な連携が取れていれば配置されているとみなされる |
介護職員 | 利用者5人に対し介護職員1人以上 |
|
機能訓練指導員 | 1人 | 理学療法士や作業療法士・言語聴覚士など |
通所介護事業所の場合は、生活相談員または介護職員のうち1名以上は常勤職員として配置する必要があります。
近年では放課後等デイサービスでも機能訓練や医療的ケアのニーズが高まっているため、通所介護事業所の運営ノウハウを障害児支援にも活かせる可能性があります。
児童発達支援管理責任者の配置は求められていないものの、管理者または主幹となる職員についてはサービス管理責任者等研修を受けていれば質の高い支援を目指せるでしょう。
また、定員20名の生活介護事業所を運営している事業所が共生型サービスとして放課後等デイサービスに参入する場合の人員配置例は以下のとおりです。
▼共生型放課後等デイサービスの人員配置例
職種 | 人数 | 備考 |
---|---|---|
管理者 | 1人 | 非常勤でも可 |
サービス管理責任者 | 1人 | 1人以上は常勤 |
医師 | 1人 | 非常勤でも可 月1回以上の勤務が必須 |
生活支援員 | 1人 | 1人以上は常勤 |
看護職員 | 1人 | |
理学療法士又は作業療法士 | 1人 | 機能訓練に必要な人数を配置 |
生活介護事業所では、看護師等が利用者の健康状態を把握し、必要に応じて医療機関への受診を勧める体制を整えていれば医師の配置は必須ではありません。
ただし、医師未配置減算の対象となる点にご注意ください。
共生型サービスの設備基準
共生型サービスの設備基準も、もともと運営しているサービスの基準が適用されます。
ここでは、通所介護事業所と生活介護事業所の設備基準を紹介します。
▼通所介護事業所の設備基準
食堂・機能訓練室 |
|
---|---|
相談室 | 遮蔽物を設けるなど相談内容が漏れない構造にする |
非常災害に際して必要な設備 | 消火設備など法令で要求される設備 |
その他の設備 | バリアフリー構造とするなど利用者自身で安全に行動できるよう配慮 |
▼生活介護事業所の設備基準
訓練・作業室 | 訓練や作業に支障のない広さを確保 |
---|---|
相談室 | 間仕切りを設けるなど相談内容が漏れない構造にする |
洗面所・便所 | 利用者の特性に応じた構造にする |
多目的室 | 利用者の支援に支障がなければ相談室と兼用可 |
その他 |
|
上記の設備基準を満たしていれば、共生型サービスとして放課後等デイサービスを提供できますが、子どもでも支障なく利用できるよう配慮した構造にするのがポイントです。
例えばトイレに子ども用の便器を増設したり、室内の突起物をできる限り減らしたりする配慮が想定されます。
共生型サービスの運営基準
共生型サービスとして複数のサービスを提供する場合でも、運営基準は提供するサービスごとに作成し、利用者に明示する必要があります。
あわせて、サービスごとの専門性を担保するために、通常の指定基準を満たす他の事業所から技術的な支援を受けられる体制の整備が必須です。
また、共生型放課後等デイサービスでは児童発達支援管理責任者が配置されない場合もあります。
その場合でも、個別支援計画に相当する計画を作成し、モニタリング・アセスメントを定期的に実施するよう努める必要があります。
サービス提供計画を立てる際は、ケアマネジャーや相談支援専門員など介護福祉に関する豊かな知見を持つ人のアドバイスを得るとよいでしょう。
共生型サービスの報酬体系
共生型サービス事業所では、提供したサービスごとに定められた報酬を算定します。
ただし、通常の事業所と異なる報酬体系や共生型サービス独自の加算・減算が設けられている場合があるので注意が必要です。
通所介護事業所が障害福祉サービスを提供する場合の加算・減算
本来の人員基準・設備基準を満たしていないため、提供するサービスごとに減算割合が設定されています。
▼共生型サービスの種類別減算割合
共生型サービスの種類 | 減算割合 |
---|---|
児童発達支援・放課後等デイサービス | 基本報酬×90/100 |
指定生活介護 | 基本報酬×93/100 |
機能訓練・生活訓練 | 基本報酬×95/100 |
また、減算対象となった事業所が以下の要件を満たしていれば「生活相談員配置等加算」として1日あたり13単位を算定できます。
なお、社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉主事任用資格のいずれかの資格があれば生活相談員として勤務可能です。
- 生活相談員を1名以上配置している(サービス提供時間帯を通して配置が必要)
- 地域貢献活動を実施している(地域住民が参加できるイベントの開催やボランティアの受け入れなど)
共生型放課後等デイサービスの基本報酬と加算
共生型放課後等デイサービスでは通常の事業所と異なり、基本報酬に利用定員・サービス提供時間の規定が設けられていません。
単価についても通常の事業所と比べて約3割低い水準に設定されています。
▼共生型放課後等デイサービスの基本報酬
サービス提供時期 | 共生型サービスでの単位 | 通常の事業所(※)での単位 |
---|---|---|
授業終了後 | 426単位 | 604単位 |
休業日 | 549単位 | 721単位 |
※定員10名以下の事業所で3時間以上サービスを提供した場合
さらに「共生型サービス体制強化加算」として、児童発達支援管理責任者や児童指導員・保育士を配置した場合には以下の単位数を算定できます。
なお、福祉専門職員配置等加算や特別支援加算も算定可能です。
- 児童発達支援管理責任者を配置:103単位/日
- 児童指導員または保育士を配置:78単位/日
共生型サービスの申請方法
共生型サービスの指定申請は、以下の流れで進めていきます。
1. 事前相談
共生型サービスの運営計画を立てる段階で、自治体(指定権者)の担当窓口に相談します。
共生型サービスをスムーズに開始するには、事業所の現状確認や整備が必要な項目などの洗い出しが必要です。
事前相談が必須の自治体もあるので、まずは自治体へ一報を入れることをおすすめします。
2. 申請書類の提出
サービス開始の2ヶ月前を目安に、申請書類を提出します。
電話予約が必要な場合や書類の綴じ方に細かなルールがある場合があるため、申請の詳しい流れは自治体の担当窓口にご確認ください。
申請手数料がかかる場合は、書類提出にあわせて納付します。
3. 審査
審査にかかる期間は30開庁日前後が一般的です。
修正事項や確認事項がある場合は担当者から連絡が入るので、早めに対応するようにします。
審査内容によっては現地確認や担当者面談が加わる場合もあります。
4. 事業所指定の通知
審査が終わったら共生型サービス事業所として指定され、指定通知書が事業所に郵送されます。
サービス開始時期は毎月1日が基本です。
障害福祉サービスの開業ならミライクス
類似するサービス内容であれば1つの事業所で介護保険・障害福祉両方のサービスを提供できるのが、共生型サービスの特徴です。
1人の利用者を長期的にケアできるのはもちろん、人口の少ない地域でも利用者を確保しやすいメリットも生まれます。
ミライクスは、放課後等デイサービス、就労継続支援B型、障害者グループホーム(共同生活援助)の開業支援を行っています。
約6ヶ月間の合同研修で、事業所の運営に必要な専門知識を得られるだけでなく経営者同士の横のつながりができるのも魅力です。
- 「共生型サービス 」(厚生労働省)
- 「新たに創設された『共生型サービス』の概要について」(福岡市)
- 「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律のポイント」
- 「やってみよう!『共生型サービス』」(さいたま市)
- 「多機能型の事業運営の考え方」(沖縄県)
- 「介護保険が優先となるサービス」(船橋市)
- 「共生型サービスの実態把握及び普及啓発に関する調査研究事業報告書」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
- 「障害福祉サービス利用者が65歳に到達した際の手続き等について」(小樽市)
- 藤井容子「共生型グループホームにおける運営的・建設的実態と課題」日本建築学会技術報告集,2022,28,69,p804-809
- 「共生型グループホームによる新たな地域福祉システム形成の可能性に関する研究」(公益財団法人日本生命財団)
- 「介護保険サービス事業者等による共生型障がい福祉サービス等事業者指定申請の手引き」(新潟市)
- 「共生型サービスを行う場合の基準の内容について」(京都府)
- 「障害福祉サービス(療養介護・生活介護・自立訓練・施設入所支援)の指定申請等に関する手続き」(兵庫県)
- 「指定生活介護事業所における医師未配置減算の取扱いについて(通知)」(栃木県)
- 「指定生活介護等事業における医師の配置について」(岡崎市)