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2023.7.14
2023.7.12
放課後等デイサービスの設備基準は?指定基準を満たすポイントを解説
放課後等デイサービスを開設するには、設備や運営に関する基準を満たさなくてはなりません。
指定基準のうち、設備基準では利用者1人あたり2.47㎡以上を目安とする指導訓練室をはじめ、必要な設備や備品が定められています。
そのほかにも、建築基準法や消防法の基準を満たさなくてはならず、知らなければ放課後等デイサービスをスムーズに開業できないでしょう。
この記事では、放課後等デイサービスの開業前に知っておきたい設備基準や建築基準法、消防法のポイントについて詳しく解説します。
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目次
放課後等デイサービスの必要設備・広さは?
放課後等デイサービスの必要設備や広さについて、厚生労働省の基準では「指導訓練室を設けること」とのみ定められています。
しかし「放課後等デイサービスガイドライン」を確認すると、もう少しイメージを膨らませることができる情報が書かれています。
続けて放課後等デイサービスに必要またはあると便利な部屋や設備、それぞれの広さなどの詳細について解説します。
参考:児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(e-GOV法令検索)
指導訓練室
指導訓練室とは、放課後等デイサービスに通う児童が療育的な指導や訓練を受ける部屋です。
放課後等デイサービスの設備基準に、指導訓練室に床面積の要件は定められていません。
しかし、ガイドラインには以下のように記載されています。
放課後等デイサービス事業所の指導訓練室については、床面積の基準は定められていないが、児童発達支援センターが児童発達支援事業を行う場合においては子ども一人当たり2.47㎡の床面積が求められていることを参考としつつ、適切なスペースを確保することが望ましい。
不動産公正取引協議会では1畳=1.62㎡(以上)と決められており、2.47㎡は約1.5畳分が目安となります。
実際には1人あたり2畳以上=3.3㎡以上のスペースがあると余裕が感じられるでしょう。
児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型事業所を例として考えてみます。
時間をずらしながらも、2つのクラスが重複する時間がある場合は、定員10名×2=20名分のスペースが必要です。
つまり、指導訓練室として3.3㎡×20名分=66㎡以上の広さが適当だといえます。
ちなみに、東京都では児童1人あたり4㎡、神戸市では有効面積で1人あたり3㎡が目安とされるなど、自治体によって具体的な基準が設けられている場合もありますので、事前の確認が必要です。
指導訓練室には、支援や訓練に必要な設備や備品も備えておきましょう。
なお、指導訓練室とは別にプレイルームを設けると、片方の部屋を使っている間にもう片方の部屋で次の時間の活動準備などができ、便利です。
また、プレイルームがあれば、おやつや休日利用日の昼食をとる場所としても利用できます。
場所を分けることができれば、集中しておこなう訓練的な活動と、遊んだり動き回ったりして過ごす活動との切り替えがしやすく、子どもたちにとっても効果的です。
相談室
利用者の保護者との面談や、入所希望の方との面談などの際に必要なスペースです。
プライバシー確保のため、できれば個室が望ましいでしょう。
なぜなら、利用者の保護者からは、子どもについての悩みを相談されることもありますし、施設に対しての苦情がもたらされることもあります。
そのため、パーテーションで仕切っただけのスペースでは、声がもれてしまうため適切とは言いがたいのです。
相談室に広さの指定はありませんが、児童の両親が面談に訪れることもありますので、その点も配慮した広さを確保できるとベストです。
スタッフの会議室としても利用できる、多目的室として用意しておくのも良いでしょう。
静養室
主に、利用者である児童がパニックを起こしてしまったり、お友達とのやり取りで興奮し過ぎたりしたときなどに使う部屋です。
また、具合が悪くなってしまった子どもや眠くなってしまった子どもの休憩用としても利用できます。
ちなみに、知的障害児を預かる児童発達支援施設では、指定基準により静養室の設置が必要です。
放課後等デイサービスの指定基準でも、大阪府など一部の自治体では静養室の「設置が望ましい」と言及しています。
それらのことから考えると、静養室はできる限り設けたほうが良いでしょう。
専用の部屋を確保するのが難しければ、相談室と兼用にしても構いません。
事務室
スタッフが事務仕事をする場所です。机と椅子、パソコンや鍵付きの書類保管棚などを設置します。
もし、別途スタッフの更衣室を用意できない場合は、事務室にスタッフの上着や荷物が置けるスペースがあると良いでしょう。
洗面所
トイレと洗面所は別々に設け、利用する児童の人数によっては洗面台を複数設けましょう。
また、指導訓練室にも手洗い場所を作ると、手洗い指導もしやすくなります。
洗面所には、感染症予防のために石鹸、ペーパータオルのほか、消毒用のアルコールなどの設置が必要です。
トイレ
利用する障害児の特性に応じたものを用意します。
できれば男女別に2ヶ所、利用者の人数に合わせた個室を設置しましょう。
放課後等デイサービスには、利用者に応じた適切な設備を整えることが求められていますので、必要に応じて手すりをつけるなどの配慮も必要です。
重症心身障害児が利用する施設であれば、ユニバーサルトイレやユニバーサルシートの設置も検討すると良いでしょう。
また、自治体によっては、事業所の外(テナント共有など)へのトイレ設置を原則不可としているので注意してください。
駐車場
敷地内に送迎用の車を置くスペースが、3台分ほど確保できれば理想的です。
しかし、都市部ではなかなか難しいかもしれません。
その場合は、近隣に1〜2台分を置ける場所を確保できると良いでしょう。
建築基準法・消防法の基準は?
放課後等デイサービスで使用する物件は、建築基準法や消防法の基準を満たしていなければなりません。
具体的にどのような点をクリアしておけば良いのかを、次に解説します。
建築基準法
放課後等デイサービスなど、児童福祉施設は建築基準法における「特殊建築物」に分類されます。
特殊建築物とは、学校や体育館、病院、劇場などを含む建築物で、一般の建築物よりも防火・避難に関する規制が厳しい建築物です。
使用面積が200㎡を超えるかどうかによって建築基準法上の申請手続きが異なります。
ただし、「使用面積」の定義、解釈が自治体によって異なるため、注意が必要です。
ある自治体ではのべ床面積のことを指していたり、また別の自治体では有効面積のことを指していたりします。
- 使用面積が200㎡未満の場合
-
2019(令和元)年の建築基準法の改正により、もともと店舗や住居として使用されていた物件を児童福祉施設として使う場合も、用途変更の確認・申請は不要となりました
つまり、放課後等デイサービスとして使う物件の使用面積が200㎡以下であれば、用途変更の申請は必要ありません。
その物件が建築完了時に完了検査を受けた印として交付されたはずの「検査済証」「確認済証」の写しを各自治体に提出すればOKです。
物件を仲介してくれる不動産業者などに、検査済証や確認済証が必要な旨を伝えましょう。
- 使用面積が200㎡未満の場合
-
建築基準法における、用途変更の確認申請が必要です。
用途変更手続きは建築行政の範疇のため建築士に依頼する必要があり、高額な費用がかかるとされています。
検査済証と確認済証が必要となりますが、これらがない場合にも用地変更の確認申請ができる可能性があります。
それは、特定行政庁(都道府県または市区町村)が一級建築士などへ依頼する形で検査を行い「建築基準法適合状況調査報告制度」に則って報告ができる場合です。
ただし、用途変更をする前に用途変更のための工事を完了させてしまうと、事後に報告制度を利用したり検査を行ったりすることはできないとされています。
そのため、必ず事前に自治体の建築指導課に確認をしましょう。
消防法
放課後等デイサービスは、消防法令上の用途区分で6項(ハ)とされています。
のべ床面積や階数により、必要な消防用設備などが定められていますので、チェックしてみましょう。
放課後等デイサービスに必要な消防用設備
誘導灯 | すべての施設 |
---|---|
カーテン等の防炎措置 | すべての施設 |
消火器具 | のべ床面積150㎡以上 |
自動火災報知設備 | のべ床面積300㎡以上 |
消防機関に通報する火災報知設備 | のべ床面積500㎡以上 |
屋内消火栓設備 | のべ床面積700㎡以上 |
スプリンクラー設備 | のべ床面積合計6000㎡以上 |
避難器具 | 下の階の用途により10人以上 |
防火管理者 | 収容人員30人以上 |
非常警報設備 | 収容人員50人以上 |
このうち、誘導灯、カーテン等の防炎措置、消火器具、避難器具などは、多くの放課後等デイサービスで用意が必要でしょう。
また、スタッフと利用者が合わせて30名以上になる場合は、防火管理者の選任もしてください。
防火管理者は、講習を受講して資格を取得しなければなりません。
消防用設備は、建物全体の規模や用途によって変わります。
放課後等デイサービスがテナントとして入ることによって、ビル全体の用途が変更となる場合もあります。
不明な点は、事前に指定権者である自治体へ確認しましょう。
放課後等デイサービスの物件探しの前に知っておきたいことは?
放課後等デイサービスの開業に際しては、どのような物件を選ぶのかも大切です。
場所選びを誤り、指定が取れなくなったり、物件によっては基準に合わせるために多額の施設費や改装費がかかってしまったりすることもあります。
また、開業後であっても基準を満たさなくなったときには指定を取り消されたり、減算されたりする可能性もあります。
そのような事態にならないように、以下の点を押さえたうえで物件を探し始めましょう。
- どこで開業するか
-
「市街化調整区域」は土地の値段が安い場所が多いため、魅力的ではあります。
しかし、基本的には人口を増やさず緑地や農地を守る方針のエリアなので、住宅や放課後等デイサービスのような施設は建築が難しい可能性が高いです。
都市計画法上の許可を都道府県知事に求める必要があり、手間や費用がかかります。
そのため、都市計画課に用途地域の確認をしたほうが良いでしょう。
- ビルか戸建てか
-
都市部ではビルやマンションの1室を利用するケースも多く、郊外部では戸建ての利用が多くなっています。
ビルの場合、
- 利用者が使うのに足るエレベーターなどがあるかどうか
- 送迎用の車を停める駐車場が確保できるかどうか
などチェックすべき点が多くなるでしょう。
また、戸建ての場合は特に、近隣住民から理解を得る必要があります。
利用者の集客や職員の採用の観点からも、ビルにするか戸建てにするかは、慎重に検討してください。
- 賃貸か購入か
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放課後等デイサービスの物件は、賃貸でも購入でもOKです。
賃貸の場合は、家賃が長期的にかかることになるので、月30〜40万円程度に抑えたいところです。
東京や大阪など大都市圏では、70㎡程度の指導訓練室の確保に注力するとよいでしょう。
郊外であれば全体で100㎡ほどの広さを確保できると余裕が生まれます。
購入する場合も、放課後等デイサービスの設備基準に合わせて改装するための費用がかかる可能性があるので、その点を踏まえて検討しましょう。
ミライクスの「放課後等デイサービス実践講座」では約半年間の実践的な研修で、物件選びもサポートします。
放課後等デイサービスに適した物件の仕様や、効率的な集客が可能なエリアの見極め方などのレクチャーも行います。
講師が運営する施設の見学も可能です。
放課後等デイサービスの開業に興味をお持ちの方は、まずは無料セミナーをご検討されてはいかがでしょうか。
参考文献・URL
- 放課後等デイサービスガイドライン(厚生労働省)
- 児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(e-GOV法令検索)
- 児童発達支援・放課後等デイサービス指定申請マニュアル(東京都)
- 障害児通所支援事業等申請手続きのてびき(神戸市)
- 不動産の公正競争規約(不動産公正取引協議会連合会)
- 指定障害児通所支援事業者指定申請の手引き(名古屋市)
- 障害福祉サービス事業者等指定申請の手引き Vol.4(札幌市)
- 社会福祉施設の消防用設備等に関わる消防法令改正の概要 もしもの火災から利用者を守る(一般財団法人日本消防設備安全センター)
- 障害児通所支援事業所を運営する上での消防法令上の留意点等について(名古屋市)
- 障害者施設に係る消防法令の改正および火災予防対策について(愛媛県)
- 社会福祉施設等においては、消防法により、必要な消防用設備等の設置及び維持が義務付けられています。(新潟県)
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執筆者
ミライクス運営事務局