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2023.12.8
2023.10.25
施設外就労のルールとは?施設外支援との違いから加算の算定方法まで詳しく解説
施設外就労とは、就労継続支援B型など就労系障害福祉サービスの利用者と職員がユニットを組み、企業から請け負った作業をその企業内で行うことを指します。
施設外就労にはいくつか要件があり、
- 施設外就労の人数が利用定員を超えないこと
- 必要な人数の職員を配置すること
- 事前に施設外就労を含めた個別支援計画を作成すること
などを守らなくてはなりません。
また、2021(令和3)年度の報酬改定により、施設外就労加算は廃止になったものの、施設外就労は報酬算定の対象となっています。
この記事では、施設外就労の要件や施設外支援との違い、算定できる加算などについて解説しています。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の監修者・執筆者
目次
施設外就労とは?
施設外就労とは、就労移行支援や就労継続支援A型・B型において、利用者と職員がユニットを組んで企業から請け負った作業をその企業内で行うことを指します。
障害のある方の中には、一般企業で働くことに不安を抱いていたり、賃金を増やしたいと考えていたりする方も少なくありません。
そのような方を対象に、企業で働き一般就労への移行をスムーズにするほか、賃金(工賃)を引き上げたり、意欲を向上させたりといった目的で、施設外就労が実施されています。
以前は施設外就労加算が算定されていましたが、2021(令和3)年度の障害福祉サービス等報酬改定時に廃止されました。
しかし制度としては継続されているため、利用者の就労の一助として活用は可能です。
要件
施設外就労を実施して報酬を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 施設外就労に出る利用者の総数は、利用定員を超えないこと
- 報酬算定上必要な人数の職員を配置すること
- 事業所の運営規程に位置付けられていること
- 事前に施設外就労を含めた個別支援計画を作成すること
- 就労能力や工賃(賃金)の向上、一般就労への移行に資すると認められること
- 緊急時の対応ができること
参考:「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(障障発0330第2号 令和3年3月30日)」(仙台市)
例えば、事業所の定員が15名であれば、当日の利用者が10名であっても、施設外就労に行けるのは15名までとなります。
また、施設外就労先の企業に利用者だけで行くことはできません。
事業所の報酬算定で必要となるだけの職員数を配置する必要があります。
この利用者と職員の割合については、10:1もしくは7.5:1となっているため、事業所の基準に合わせて配置しましょう。
また、上記の要件は2021(令和3)年3月時点のものですが、3年ごとに改正が行われているため都度最新の情報を確認してください。
施設外支援との違い
施設外就労とよく似たものに「施設外支援」があります。
施設外就労では利用者が企業で仕事を請け負う際に職員の配置が必要ですが、施設外支援では利用者が単独で企業に出向いて作業をします。
施設外支援は労働とは異なり、職場実習の支援そのものを指すため、報酬は発生しません。
そのほかの詳しい違いは以下の表にまとめました。
▼施設外就労と施設外支援の違い
施設外就労 | 施設外支援 | |
---|---|---|
企業からの報酬 | あり | なし |
職員の配置 | 必要 | 不要 |
期間 | 無制限 | 年間180日以内 |
運営規程への記載 | 必要 | 必要 |
個別支援計画への記載 | 必要 | 必要 |
日報の作成 | 不要 | 必要 |
実績(実施)報告書の作成 | 必要※ | 不要 |
緊急時対応 | 必要 | 必要 |
その他 | ・施設外就労をしている人と同人数を事業所は新たに受け入れてOK ・請負契約を締結すること |
・個別支援計画は1週間ごとの見直しが必要 |
※施設外就労の加算がなくなったことを受け、社会保障審議会障害者部会に自治体の事務負担を軽減する方策の検討が提案され、2023(令和5)年9月までに結論を出す方針です。
参考:「令和4年の地方からの提案等に関する対応方針について」(厚生労働省)
施設外就労のメリット・デメリットは?
施設外就労の最も大きなメリットは本来の定員よりも多くの利用者を受け入れられる点にありますが、職員の配置が難しいなどのデメリットも存在します。
メリット
施設外就労のメリットは事業所だけでなく受け入れる企業側にもあります。
▼施設外就労のメリット
事業所 | 企業 |
---|---|
・実質的な定員を増やせる ・就職先の確保がしやすくなる ・利用者の多様な特性に合わせた仕事の提案ができる ・職員の指導のノウハウも蓄積される |
・障害者の直接雇用のノウハウを得られる ・人手不足の解消・人件費の削減ができる ・人材発掘の機会を得られる ・CSRやSDGsに即している |
施設外就労を取り入れた事業所の最も大きなメリットは、実質的な定員を増やせることです。
定員の範囲内であれば、施設外就労をしている人と同人数を事業所内に受け入れることができます。
例えば、定員15名の事業所で15名が施設外就労を行うケースでは、事業所内に15名の利用者を追加できるので、1日あたり30名の利用者を受け入れることができるのです。
一方、施設外就労を受け入れる企業側には、人手不足の解消や人件費の削減ができるメリットがあります。
障害者雇用のノウハウを得られるので、将来直接雇用を行う場合にも役立つでしょう。
デメリット
一方で、施設外就労には以下のようなデメリットも想定されます。
- 職員の配置が難しい
- 協力企業を見つけるのが難しい
- 賃金(工賃)への効果がまちまちである
1.職員の配置が難しい
職員の人数にも限りがあるため、すべての施設外就労先に職員を配置することが難しい場合があります。
職員不足の状況であれば、配置が難しいことは明らかです。
施設外就労を実施していない就労継続支援A型事業所の約33%、就労継続支援B型事業所の約25%が職員の数が不足していることを理由に挙げています。
特に就労継続支援A型事業所では、職員のノウハウ不足により施設外就労を行えない事業所も見られます。
参考:就労系サービスにおける諸課題の把握と事例整理に関する調査研究【報告書】」(厚生労働省)
2.協力企業を見つけるのが難しい
外部企業と協力するに至った経緯として多いものは、事業所の職員・関係者の紹介か事業所による開拓であり、提携先を見つけるのは容易なことではありません。
施設外就労を実施していない就労継続支援A型事業所の約26%、就労継続支援B型事業所の約23%は、協力企業が見つからないことを理由に挙げています。
仮に協力企業が見つかっても、受け入れ経験が乏しい場合は障害の理解や環境の整備から始めなければならず、事業所の負担も大きいものです。
また、特定の企業に依存してしまうと景気や経営状態の影響を強く受けてしまうため、注意が必要となります。
参考:「就労系サービスにおける諸課題の把握と事例整理に関する調査研究【報告書】」(厚生労働省)
3.賃金(工賃)への効果がまちまちである
施設外就労による賃金(工賃)への効果は、サービス形態により差があることが調査によりわかっています。
就労継続支援A型ではあまりプラスの効果がなかった一方、就労継続支援B型は賃金(工賃)の向上が見られており、必ずしも一律に効果があるとは言えないようです。
また、令和3年報酬改定で施設外就労の加算が廃止されました。
一般就労への移行実績や高い工賃の実現、地域連携への取組を評価するように組み替えられたため、今後の賃金への効果を期待したいものです。
参考:「就労系サービス(横断事項)に係る報酬・基準について《論点等》」(厚生労働省)
施設外就労で得られる加算は?
前述した通り、従来の施設外就労加算は2021(令和3)年の報酬改定で廃止されました。しかし、同年の報酬改定で「地域協働加算」が新設されています。
地域協働加算は、利用者が地域で活躍の場を広げることを目的に創設されました。
就労継続支援B型事業所を対象とした加算であり、以下の要件を満たせば30単位/日が算定可能です。
- 就労継続支援B型サービス費(Ⅲ)または(Ⅳ)を算定している
- 地域住民・地元企業・その他の関係者と共同で取り組んでいる
- インターネットの利用その他の方法で公表している(ブログでの紹介も含む)
取り組みの例としては、
- 農福連携による施設外活動
- 請負契約による公共施設の清掃
- 地域のイベントでの出店
などが挙げられます。
いずれも、
- 地域に出て取り組むこと
- 地域の課題解決のために取り組むこと
- 地域の方々と取り組むこと
といった前提は外せません。
また、生産活動収入が発生しない活動(無報酬のボランティアなど)については、地域共同加算の対象とならないため注意してください。
施設外就労に必要な書類は?
施設外就労を実施した場合、事業所は以下の書類を毎月の請求に合わせて自治体に提出しなければなりません。
- 利用者の個別支援計画書の写し
- 利用者のサービス提供実績記録票の写し
- 施設外就労実績(実施)報告書
また、実績(実施)報告書の書式は市町村により異なるため、事前に確認しておきましょう。
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就労継続支援B型は、主に国からの給付で運営されているため、安定性が高く、利益率も高い傾向にあります。
運営にあたり、利用者の工賃向上と地域協働加算の算定の両面において施設外就労はキーとなりますが、協力企業の確保や職員の配置など、その準備は容易ではありません。
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参考文献・URL
- 「令和3年度障害福祉サービス報酬改定の概要」(厚生労働省)
- 「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(障障発0330第2号 令和3年3月30日)」(仙台市)
- 「施設外就労の留意事項」(仙台市)
- 「注意事項」(高知市)
- 「施設外支援・施設外就労のチェックポイント」(旭川市)
- 「障がい者の働きたい!!を支えよう 〜まずは業務の一部を委託してみませんか〜」(福井県)
- 「令和4年の地方からの提案等に関する対応方針について」(厚生労働省)
- 「就労系サービスにおける諸課題の把握と事例整理に関する調査研究【報告書】」(厚生労働省)
- 「就労系サービス(横断事項)に係る報酬・基準について《論点等》」(厚生労働省)
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執筆者
ミライクス運営事務局