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2023.12.10
2023.10.25
授産施設とは?根拠法から就労支援施設・作業所との違いまで解説
授産施設とは、一般就労や十分な収入の確保が難しい人に対し、就労や技能の習得・自立を手助けする施設です。
現在の日本には、生活保護法上の授産施設と社会福祉法における社会事業授産施設の2種類があります。
この記事では授産施設の変遷の歴史から、就労継続支援B型などの就労支援施設や作業所との違いまで解説します。
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目次
授産施設とは?
授産施設とは、さまざまな事情から一般就労や十分な収入の確保が難しい人を対象とし、就労やスキル習得・自立をサポートする施設を指します。
現在の日本における授産施設は、
- 「生活保護法」に基づく授産施設(生保授産施設)
- 「社会福祉法」に基づく授産施設(社会事業授産施設)
の2種類です。
かつては障害福祉に関する旧法を加えた5種類の法律に基づく、11種類の授産施設がありました。
しかし、現在残っているのは生活保護法と社会福祉法に基づく授産施設のみです。
生活保護法・社会福祉法に基づく授産施設はどちらも、一般就労が難しい人や低所得の人に必要なトレーニング・福祉的就労の場を提供して、自活できるようにすることを目的としています。
では、違いは何なのでしょうか?
▼生保授産施設と社会事業授産施設の違い
授産施設(生保授産施設) | 授産施設(社会事業授産施設) | |
---|---|---|
根拠法 | 生活保護法第38条第1項4号 | 社会福祉法第2条第2項第7号 |
概要 | 身体・精神・世帯の事情で就業能力が限られる要保護者に対して、就労や技能の習得のために必要なサポートをして自立を促す施設 | 比較的労働力が低く生活が困窮している人に対して、就労やスキル習得のために利用させ、保護や自立更生を図る施設 |
施設数※ | 15 | 61 |
※令和3年10月1日時点。
出典:「令和3年社会福祉施設等調査の概況(総括表)」(厚生労働省)
生活保護法に基づく授産施設の利用対象となるのは、身体上・精神上の理由や世帯の事情から就労能力が限られる「要保護者」です。
「要保護者」とは生活保護法において、実際に生活保護を受けているかどうかに関わらず、保護が必要な状態にある人をと定義されています。
一方、社会福祉法に基づく授産施設は、労働力が比較的低く生活に困窮している人が対象です。
ただ、どちらも就労・技能習得の機会を提供し、自立に向けたサポートを提供するという点で社会的な役割に大きな違いはないといえます。
なお、響きから混同しやすい言葉に「助産施設」がありますが、助産施設は経済的理由から入院助産を受けられない妊産婦を入所させる施設です。
授産施設とは全くの別物だと覚えておきましょう。
授産施設と就労支援施設の違いは?
障害福祉において、授産施設と就労支援施設(就労継続支援事業所・就労移行支援事業所)は混同されやすい言葉です。
旧制度との混同がないよう、それぞれの違いを整理して紹介します。
現在障害者を対象とした「授産施設」はない
かつては障害がある人を対象に、旧身体障害者福祉法をはじめとした各根拠法に基づいて、次のような施設がありました。
▼生保授産施設と社会事業授産施設の違い
旧身体障害者福祉法による身体障害者更生援護施設 | 身体障害者入所授産施設 身体障害者通所授産施設 身体障害者小規模通所授産施設 身体障害者福祉工場 |
---|---|
旧知的障害者福祉法による知的障害者援護施設 | 知的障害者入所授産施設 知的障害者通所授産施設 知的障害者小規模通所授産施設 知的障害者福祉工場 |
旧精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による精神障害者社会復帰施設 | 精神障害者入所授産施設 精神障害者通所授産施設 精神障害者小規模授産施設 精神障害者福祉工場 |
しかし、これらの授産施設・福祉工場はいずれも2011(平成23)年で終了しています。
障害者が対象の入所・通所授産施設で行われていた日中活動は、ほぼ同様の内容が「障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)」による就労系障害福祉サービスで提供されるようになりました。
障害者自立支援法(現「障害者総合支援法」)により、障害種別ごとに分立していた既存の施設(授産施設も含む)や事業体系が、就労支援施設をはじめとした障害福祉サービス体系に再編されたためです。
障害者総合支援法による就労系障害福祉サービスを提供している施設を、一般に「就労支援施設」と呼びます。
ただし、「就労支援施設」は正式な名称ではないため、実際に施設を探したり情報を収集したりする場合は施設の種類と役割ごとの名称も覚えておきましょう。
就労支援施設は3種類
旧法に基づく障害者向けの授産施設と似た役割のサービスを提供している就労支援施設は、以下の3種類です。
- 1.就労移行支援事業所
- 就労移行支援事業所は、一般企業で働けると思われる人を対象として、就労に向けて一定期間のトレーニングや就労サポートを提供する施設です。
- ずっと通所するわけではなく、必要な訓練が終わって一般就労が可能な状態になれば、求人へ応募します。
- 2.就労継続支援A型事業所
- 就労継続支援A型事業所は、一般就労は難しくても雇用契約を結んで働ける人を対象に、福祉的就労や生産活動の機会を提供する施設です。
- 就労移行支援とは違って、一定期間ののちに一般就労へチャレンジする前提ではありません。
- 3.就労継続支援B型事業所
- 就労継続支援B型事業所は、A型事業所や一般企業で雇用契約を結んで働くのが難しい人が対象です。
- 福祉的就労や生産活動の機会を提供します。
- 平成19年に行われた調査では、新制度への移行を済ませた授産施設のうち約7割が就労継続支援B型に移行しており、半数以上が就労移行支援も実施しているとされています。
- 小規模通所授産施設は、約9割が就労継続支援B型に移行しました。
- なお、福祉工場(事業所と雇用関係を結び、労働基準法が適用される施設)は約9割が就労継続支援A型に移行しています。
- 現行制度の特徴は、障害がある人の状態に合わせてサービスを選べる点です。
- かつての制度に比べて、その人のニーズに合った支援を受けやすくなったといえるでしょう。
授産施設と作業所の違いは?
障害者の生産活動の場という意味合いで、古くから「作業所」という言葉もよく使われてきました。
作業所と授産施設の違いは何なのでしょうか?
制度上の違いとともに、一般的に「作業所」という言葉が使われるときのニュアンスについても紹介します。
作業所(小規模作業所)は法律で定められた施設ではない
現在の国の制度に基づいて考えたとき、授産施設と作業所の違いは簡単にいえば「法律で定められている施設(法定施設)かどうか」です。
生活保護法・社会福祉法に基づく現在の授産施設や、かつて旧法に基づいて障害者を対象としていた授産施設と違い、2023 (令和5)年5月時点の日本に法律に基づいて運用されている「作業所」はありません。
「小規模作業所」「共同作業所」「福祉作業所」などさまざまな名前で呼ばれる作業所は、保護者団体やボランティアをはじめとした団体によって運営される法定外施設です。
住み慣れた地域で働く場や交流の場を提供する作業所の始まりは、1969(昭和44)年に開設された共同作業所とされています。
以来、在宅の障害者が外に出て生産活動を営む場として全国に広まり、地域に密着した形態で運営されてきました。
その後に旧障害者自立支援法が制定されると、作業所が法人格取得をはじめとした要件を満たせば、就労支援サービスや地域活動支援センターに移行できるようになります。
その結果、2006(平成18)年4月時点で5,777ヶ所だった小規模作業所は、2011( 平成23)年4月時点では1,067ヶ所まで減りました。
平成19年の調査では、新体系に移行した小規模作業所のうち約8割が就労継続支援B型に移行したとされています。
就労継続支援事業所を「作業所」と通称する場合もある
公的な分類では、作業所と授産施設、就労支援施設(就労移行支援事業所、就労継続支援A・B型事業所)は別物です。
ただ、障害者を対象とした就労支援施設のことを通称して「作業所」と表現するケースがいまだにあります。
自治体が発信している情報でも、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所を指して「作業所」としているケースが出てくることに注意しましょう。
調べ物をするときは、「作業所」が法定外施設である小規模作業所や共同事業所を指しているのか、法定施設である就労継続支援A・B型事業所を指しているのか、文脈から読み取らなければなりません。
ただ、前提をしっかり読めば混同する心配はあまりないでしょう。
本来は違うものを指すこととそれぞれの特徴を理解しておくと、さらに理解しやすくなります。
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参考文献・URL
- 「社会福祉施設等調査:調査の結果(用語の解説)」(厚生労働省)
- 「生活保護法」(厚生労働省)
- 「救護施設・社会事業授産施設」(長野市)
- 「社会福祉施設等調査:調査の結果(用語の解説)」(厚生労働省)
- 「障害者の就労支援対策の状況」(厚生労働省)
- 「障害者の就労支援に関する主な施策」(厚生労働省)
- 「ゆたか福祉会40年のあゆみ」(障害学会)
- 「大阪府障がい者自立支援協議会からの就労支援部会対応課題項目〜就労支援、職場定着支援〜<市町村障がい福祉主管課ヒアリング等による課題抽出>」(大阪府)
- 「障害者自立支援に係る工事例の収集及び調査研究事業 報告書」(公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会)
- 「生保・社会事業授産施設のあり方に関する提案」(厚生労働省)
- 「福祉的就労分野における労働法適用に関する研究会報告書」(公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会)
- 「令和3年社会福祉施設等調査の概況(総括表)」(厚生労働省)
- 「授産施設制度のあり方に関する提言」(国立社会保障・人口問題研究所)
- 「小規模作業所等の新体系移行について」(姫路市)
- 「障害者自立支援法による障害福祉サービス移行状況調査〜新体系への移行が5割超える、4月1日現在〜」(厚生労働省)
- 「障害者自立支援法の円滑な施行に向けて」(厚生労働省)
- 「小規模作業所の新体系等への移行状況」(厚生労働省)
- 「共同作業所(小規模作業所)」(独立行政法人福祉医療機構)
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執筆者
ミライクス運営事務局