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2023.8.29
2023.8.9
重心型放課後等デイサービスとは?人員配置基準や報酬について解説
重心型放課後等デイサービスとは、重度の身体障害と知的障害を合併している重症心身障害児(重心児)を主に受け入れるサービスです。
医療的ケアをはじめとする専門的な支援を提供するため、人員配置基準や報酬は一般の放課後等デイサービスと異なります。
近年では医療的ケア児の支援ニーズが高まっている一方、療育を受ける機会の少なさや預け先がないことを生活上の課題だと考える人が少なくありません。2021年9月には「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が制定されるなど、家庭・学校と連携したケアも期待されています。
この記事では、重心型放課後等デイサービスの立ち上げを検討されている方に向け、人員基準・設備基準や報酬体系・算定可能な主な加算について解説します。
目次
重心型放課後等デイサービスとは?
重心型放課後等デイサービスとは、特別支援学校や小学校・中学校・高等学校に通う重症心身障害児に特化した支援・療育を提供する放課後等デイサービス事業所です。
重症心身障害は重度の身体障害と重度の知的障害を併せ持った状態のことをいいますが、医学的な診断名ではなく行政上の概念として位置づけられています。
重症心身障害児の区分法として用いられる「大島分類」では、寝たきりまたは座位までの運動機能を持つIQ35以下の児童と定義されます。
食事や排泄など日常生活のあらゆる場面での介助が必要で、医療的ケアを必要とする児童も多いです。
重症心身障害児は、主に以下のような特徴を持っています。
- 自力で起き上がれない
- 自力での移動が困難
- 排泄に全介助が必要
- 自力で食事ができない
- 手足に変形・拘縮が生じている
- 筋肉の緊張で思うように手足を動かせない
- 言葉による理解や意思伝達が困難
- 喀痰吸引(たん吸引)が必要な人が多い
参考:「重症心身障害児(者)とは」(北海道重症心身障害児(者)を守る会)
中でも、人工呼吸器や中心静脈栄養(IVR)・経管栄養といったケアが必要な児童は超重症児と呼ばれています。
重症心身障害児のケアにあたっては高い専門性ときめ細かな配慮が必要です。
そのため、一般の事業所とは異なる報酬体系・人員基準が設定されています。
一般的な放課後等デイサービスでは定員10名以上のところ、重症心身障害児を主に受け入れる場合は5名以上の定員でよいという特例も設けられています。
重心型放課後等デイサービスの報酬は?
重心型放課後等デイサービスの報酬は、一般型の放課後等デイサービスとは異なる体系です。
一方、算定できる報酬の種類は一般型とほぼ同じですが、定員10名以下の事業所で児童指導員等加配加算と専門的支援加算を配置する場合の単位数が手厚くなっています。
また、看護職員加配加算は重心型のみ算定可能な加算です。
引き続き、主に重症心身障害児(重心児)を受け入れる放課後等デイサービスの、基本報酬と主な加算について解説します。
重心型放課後等デイサービスの基本報酬
定員5名の重心型放課後等デイサービスの基本報酬は授業終了後1,756単位、土日祝日や長期休暇など学校の休業日は2,038単位で、一般型放課後等デイサービスの約3倍です。
定員が増えるほど利用者1人あたりの報酬は少なくなる体系で、特に定員11名以上になると定員10名以下で運営するよりも1日あたりに得られる報酬の総額は少なくなります。
一方、定員5名~10名で運営する場合は報酬総額に大きな差がないため、少ない定員で運営することで高い収益性を見込めます。
定員が少ない分だけスタッフの目が行き届きやすくなり、質の高いサービス提供により一般型事業所との差別化も期待できるでしょう。
▼重心型放課後等デイサービスの基本報酬(利用者1名あたり)
定員 | 授業終了後 | 学校の休業日 |
---|---|---|
5人 | 1,756単位 | 2,038単位 |
6人 | 1,467単位 | 1,706単位 |
7人 | 1,263単位 | 1,466単位 |
8人 | 1,108単位 | 1,288単位 |
9人 | 989単位 | 1,150単位 |
10人 | 893単位 | 1,039単位 |
11人以上 | 686単位 | 810単位 |
▼一般的な放課後等デイサービスの基本報酬(定員10名以下、利用者1名あたり)
区分 | 授業終了後3時間未満 | 授業終了後3時間以上 | 学校の休業日 |
---|---|---|---|
医療的ケア区分3 | 2,591単位 | 2,604単位 | 2,721単位 |
医療的ケア区分2 | 1,591単位 | 1,604単位 | 1,721単位 |
医療的ケア区分1 | 1,258単位 | 1,271単位 | 1,388単位 |
医療的ケアに該当しない障害児 | 591単位 | 604単位 | 721単位 |
また、重心型放課後等デイサービスでは医療的ケア児や一般的な障害児の受け入れも可能です。
その場合は、受け入れた児童の分について一般型事業所の基本報酬が適用されます。
例えば、定員5名の重心型事業所で重心児4人と医療的ケア区分3の児童1人を受け入れた場合の学校休業日の報酬は、2,038単位×4人+2,721単位×1人=10,873単位です。
ただし、重心児以外の障害児が定員の半数以上になると運営基準の「主として重症心身障害児を受け入れる」に該当しなくなるおそれがあるのでご注意ください。
保護者や相談支援事業所などから重心児以外の受け入れ要望があった場合は、念のため自治体(指定権者)への確認をおすすめします。
重心型放課後等デイサービスで算定できる主な加算
重心型放課後等デイサービスでは、主に以下の加算を算定できます。
- 児童指導員等加配加算
- 専門的支援加算
- 看護職員加配加算
- 医療連携体制加算
- 送迎加算
- 児童指導員等加配加算
-
人員基準で定められた人数に加えて、児童指導員・保育士や理学療法士などの専門職を常勤換算で1名以上配置する事業所が算定できる加算です。
児童指導員の任用資格に該当しない人でも、重度訪問介護従事者養成研修(行動障害支援課程)や強度行動障害支援者養成研修・行動援護従事者養成研修のいずれかを修了していれば児童指導員等としての加算を受けられます。
▼児童指導員等加配加算
定員 理学療法士等 児童指導員等 その他の従業者(※) 5人 374単位 247単位 180単位 6人 312単位 206単位 150単位 7人 267単位 176単位 129単位 8人 234単位 154単位 113単位 9人 208単位 137単位 100単位 10人 187単位 123単位 90単位 11人以上 125単位 82単位 60単位 ※その他の従事者とは、看護師や児童指導員補助などをいう。
- 専門的支援加算
-
機能訓練担当職員による専門的な支援を個別に行うために、人員基準で定められた人数に加えて、機能訓練担当職員を常勤換算で1名以上多く配置する事業所が算定できる加算です。
機能訓練担当職員とは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士や心理指導担当職員(公認心理師・臨床心理士)のことをいいます。
児童発達支援とは異なり、児童指導員は加算対象者にできないのでご注意ください。
また、加算取得にあたっては個別支援計画の中で専門的支援の必要性や実施内容を具体化しておく必要があります。
▼専門的支援加算
定員 単位数 5人 374単位 6人 312単位 7人 267単位 8人 234単位 9人 208単位 10人 187単位 11人以上 125単位
- 看護職員加配加算
-
医療的ケアを提供する事業所であることをホームページ等で公表した上で、2人目以降の看護師を配置した場合に算定できる加算です。
加算の区分は、以下の2つに分けられています。
看護職員加配加算(Ⅰ) 看護職員加配加算(Ⅱ) 看護師の追加配置数 常勤換算で1以上 常勤換算で2以上 医療的ケアスコア 40点以上 72点以上 医療的ケアスコアとは、吸引や経管栄養・導尿・排便管理などの医療的ケアを必要とする度合いを主治医の所見に基づいて数値化したものです。
看護職員加配加算を算定する場合は、利用者ごとに医療的ケアスコアと前年度の利用実績を集計して、加算の対象になるかを判定します。
ただし開業から3ヶ月以内の場合は、利用者の医療的ケアスコアを合計した上で加算の可否を判定します。
利用者1人あたりの加算単位数は、以下のとおりです。
▼看護職員加配加算の加配単位数
定員 看護職員加配加算(Ⅰ) 看護職員加配加算(Ⅱ) 5人 400単位 800単位 6人 333単位 666単位 7人 286単位 572単位 8人 250単位 500単位 9人 222単位 444単位 10人 200単位 400単位 11人以上 133単位 266単位
- 医療連携体制加算
-
医療機関や訪問看護ステーションから看護師が訪問して、利用時に看護を提供した場合に算定できる加算です。
事業所に在籍する看護師が看護を行っても、医療連携体制加算は算定できます。
医療連携体制加算を算定する場合には、医療的ケアに該当しない障害児の基本報酬が適用されます。
なお、重心型放課後等デイサービスの基本報酬を算定するか、医療連携体制加算を取得した上で医療的ケアに該当しない障害児の基本報酬を算定するかは事業所が判断します。
▼医療連携体制加算
看護を受けた児童数 1人 2人 3~8人 医療連携体制加算(Ⅰ) 32単位 32単位 32単位 医療連携体制加算(Ⅱ) 63単位 63単位 63単位 医療連携体制加算(Ⅲ) 125単位 125単位 125単位 医療連携体制加算(Ⅳ) 800単位 500単位 400単位 医療連携体制加算(Ⅴ) 1,600単位 960単位 800単位
- 送迎加算
-
事業所の自動車を使って利用者を送迎する際に、片道1回あたり37単位を算定できます。
事業所と自宅の間の送迎が基本ですが、保護者との合意のもとで個別支援計画に記載していれば短期入所(ショートステイ)施設への送迎も可能です。
重心型放課後等デイサービスの人員配置基準は?
重心型放課後等デイサービスを開業・運営するためには、以下の人員配置を満たすことが必須です。
▼重心型放課後等デイサービスの人員配置基準の例
職種 | 配置人数 | 常勤要件 | 備考 |
---|---|---|---|
管理者 | 1人以上 | なし | 児発管と兼務可能 |
児童発達支援管理責任者(児発管) | 1人以上 | なし | – |
児童指導員または保育士 | 1人以上 | なし | 営業時間を通じて配置 |
看護職員 | 1人以上 | なし | 営業時間を通じて配置 |
機能訓練担当職員 | 1人以上 | なし | 機能訓練を実施する時間帯のみの配置 |
嘱託医 | 1人以上 | なし | – |
一般型の放課後等デイサービスとは異なり、重心型放課後等デイサービスでは児童発達支援管理責任者や児童指導員・保育士の常勤要件が定められていません。
一方、看護職員については医療的ケアの実施有無にかかわらず営業時間を通じて1名以上の配置が必要です。
また、嘱託医については必ずしも事業所内に常駐している必要はありませんが、定期的に利用時の心身の状態を観察してもらえる体制や、必要に応じて医療的ケアに関する助言・指導を受けられる体制を整えておく必要があります。
小児科医や精神科医など、小児医学や心理面に明るい医師を嘱託医として選ぶとよいでしょう。
重心型放課後等デイサービスの設備基準は?
重心型放課後等デイサービスの設備基準は、法律(児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準)で定められていますが、指導訓練室の広さや事業所の設置フロアなどに関する独自ルールを設けている自治体があります。
事業所の開設計画を立てる前に、設備基準の詳細を自治体(指定権者)へご確認ください。
ここでは、東京都における重心型放課後等デイサービスの設備基準を紹介します。
▼重心型放課後等デイサービスの設備基準(東京都の場合)
設備 | 基準・ポイント |
---|---|
指導訓練室 | 児童1人あたり4㎡以上、死角がない空間にする ※一般型事業所への転用を考えると40㎡以上が必須 |
事務室 | 広さ4~5㎡以上、鍵付きの書庫が必須 |
相談室 | 広さ4~5㎡以上、相談内容等が外部に漏れなければ指導訓練室等と固定パーティションで区切っても差し支えない |
洗面所 | 手洗い・うがい用と、トイレ後の手洗い用、コップ等の洗浄用を区分して設置 |
トイレ | 2ヶ所以上、障害の状況・程度に合わせた構造にする |
その他 | 地下や3階以上・窓なし物件への設置は避けること |
参考:「児童発達支援・放課後等デイサービス指定申請マニュアル」(東京都)
静養室の設置については設備基準で定められていませんが、排せつ介助や医療的ケアを実施する際のプライバシーに配慮するため、できる限り設置しておくことをおすすめします。
静養室を設置する際は、利用児が横になった状態での介助に支障がない広さ(4.5~6畳が目安)を確保するようにします。
また、大型の車椅子(バギー)での移動に支障が生じないよう、廊下や出入口の幅を広めに確保しておくとよいでしょう。
重心型放課後等デイサービスを開業するならミライクス
2020年4月現在、一般型の放課後等デイサービスの事業所数は14,402事業所なのに対し、重心型放課後等デイサービスの事業所数は407事業所です(※)。
重心型の事業所は年々増えているものの、学校以外の障害児の預け先ニーズに追いついていないのが実情です。
出典:※出典:「第16回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 議事次第(オンライン会議)参考資料」(厚生労働省)
また、重心型事業所の収支は厳しいと考えられてきましたが、定員5名で運営すれば最小限の人数で高い専門性を発揮でき、加算算定と相まって安定した収益を期待できます。
ちなみに定員5名の事業所で月の稼働率が100%と仮定すると、基本報酬だけでも約277万5千円の売上が見込まれます(1単位10円で換算)。
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- 「重症心身障がい児(者)について」(岐阜県)
- 「令和3年度障害福祉サービス等の報酬改定及び医療的ケア児支援センター等について」(厚生労働省)
- 「重症心身障害児(者)とは」(北海道重症心身障害児(者)を守る会)
- 「【看護師用】学校における医療的ケア実施対応マニュアル 第Ⅲ章 医療的ケア児についての理解」(日本訪問看護財団)
- 「重症心身障害について」(和歌山県)
- 「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定」(厚生労働省)
- 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」(令和3年厚生労働省告示第87号)
- 「医療的ケアを必要とする障害児への支援に係る報酬の取扱いについて(VOL.2)」(厚生労働省)
- 「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準(2ページ)」(厚生労働省)
- 「児童指導員等加配加算・専門的支援加算について」(福岡市)
- 「令和2年度指定障がい児支援事業者等集団指導の開催について 実地指導における主な指摘事項(報酬編)」(大阪府)
- 「障がい児支援事業者等指定申請の手引き」(大阪市)
- 「基準の人員配置について<児童発達支援・放課後等デイサービス>」(福岡市)
- 「児童発達支援・放課後等デイサービス指定申請マニュアル」(東京都)
- 「障がい児支援事業者等指定申請の手引き」(大阪市)
- 「第16回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 議事次第(オンライン会議)参考資料」(厚生労働省)