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2023.11.27
2023.10.25
ジョブコーチとはどんな仕事?仕事内容から資格要件まで詳しく解説
ジョブコーチ(職場適応援助者)とは、障害のある方が職場に定着して長く働き続けられるように、職場に出向いて直接サポートをする仕事です。
ジョブコーチになるための資格や試験はなく、研修を受講すればジョブコーチとして活動できます。
この記事ではジョブコーチの仕事内容や種類、どうしたらジョブコーチになれるかを中心に、ジョブコーチ支援制度の利用についても紹介していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事の監修者・執筆者
目次
ジョブコーチとは?
ジョブコーチ(職場適応援助者)とは、障害のある方が働くにあたって、職場でうまくコミュニケーションが取れ、問題なく仕事ができるようにサポートする仕事です。
サポートの対象には、障害者本人とその家族はもちろん、会社(事業所)も含まれ、労働者と雇用側両者がスムーズに仕事が進められるように働きかけます。
そんなジョブコーチは働く場所によって
- 配置型ジョブコーチ
- 訪問型ジョブコーチ
- 企業在籍型ジョブコーチ
の3種類に分けられます。
ジョブコーチの詳しい仕事内容や種類については以下の通りです。
仕事内容
ジョブコーチは障害のある方が職場で働きやすくなるように具体的な目標を定め、支援計画に基づいてサポートを行います。
障害の特性に合わせた環境づくりや仕事内容をスムーズに行うための援助をしているため、障害者と会社の橋渡しのような役割といえるでしょう。
▼ジョブコーチの行う支援
対象 | ジョブコーチが行う支援 | |
---|---|---|
障害のある方とその家族 | 障害のある方 |
・職場で仕事をしやすくする(仕事のミスを減らす・能率アップなど)ための支援 ・職場内のコミュニケーションの取り方の支援 ・体調管理や生活リズムの整え方の支援 |
家族 | ・障害者本人が安定して職場で働くための関わり方の支援 | |
雇用事業主 |
事業主 (管理監督者・人事担当) |
・障害の特性による対応方法の助言 ・障害者の配置や仕事内容の振り分け方を支援 ・トライアル雇用での不安への助言 |
上司・同僚 |
・障害者への関わり方・指導方法の支援 ・障害の理解の啓発 |
ジョブコーチは会社に対しても障害の特性をふまえた仕事の割り振りができるように支援をしますが、最終的に上司や同僚がサポート(ナチュラルサポート)できることを目指しています。
1〜8ヶ月(標準的には2〜4ヶ月)の期間で段階に合わせ、サポートの仕方を以下のように変えていきます。
- 初めの頃は集中してサポートする(集中支援期)
- 少しずつサポートの頻度を減らす
- ジョブコーチから職場の担当者のサポートへ移行する(移行支援期)
このようにサポートの仕方を変えることにより、障害のある方に時間をかけて少しずつ職場や担当者に慣れてもらえるのです。
最終的に会社の上司や同僚が支援(ナチュラルサポート)できるようになればジョブコーチのサポートは終了です。
種類
ジョブコーチは働く場所によって「配置型ジョブコーチ」「訪問型ジョブコーチ」「企業在籍型ジョブコーチ」の3種類に分けられます。
訪問型と企業在籍型では研修を受ける必要があり、特に訪問型では就労支援の経験などが求められる点が特徴といえます。
配置型ジョブコーチ
地域障害者職業センターなどで働くジョブコーチが、就職等が難しい障害者をメインに支援を行います。
▼配置型ジョブコーチの概要
所属 | 地域障害者職業センター等 |
---|---|
要件 | — |
担当するジョブコーチに特別な要件はありませんが、職務分析などの知識を持ち、長期間の研修を受けているケースが大半です。
訪問型や企業在籍型と連携して支援を行う場合もあります。
訪問型ジョブコーチ
障害者の就労支援を行う社会福祉法人などで働いているジョブコーチが、会社に出向いて直接サポートします。
▼訪問型ジョブコーチの概要
所属 | 障害者の就労支援を行う社会福祉法人等 |
---|---|
要件 |
・訪問型職場適応援助者養成研修(※)を修了し、必要な相当程度の経験・能力を有する方 ・障害者の就労支援に関する実務経験が1年以上ある方 ※高齢・障害・求職者雇用支援機能または厚生労働大臣が指定する民間機関で実施するもの |
訪問型ジョブコーチになるには、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構または厚生労働大臣が指定する民間機関が行う「訪問型職場適応援助者養成研修」を受講・修了する必要があります。
企業在籍型ジョブコーチ
障害者を雇用する企業に所属しているジョブコーチです。
▼企業在籍型ジョブコーチの概要
所属 | 障害者を雇用する各企業 |
---|---|
要件 |
企業在籍型職場適応援助者養成研修(※)を修了し、必要な相当程度の経験・能力を有する方 ※高齢・障害・求職者雇用支援機能または厚生労働大臣が指定する民間機関で実施するもの |
企業在籍型ジョブコーチになるには、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構または厚生労働大臣が指定する民間機関が行う「企業在籍型職場適応援助者養成研修」を受講・修了する必要があります。
自社のことをよく把握しているため、仕事の切り出しがしやすい点もメリットです。
ジョブコーチ支援を利用するメリット
ジョブコーチ支援を利用することは、障害者だけでなく会社側にとっても次のようなメリットがあります。
▼ジョブコーチ支援制度を利用するメリット
利用者 | メリット |
---|---|
障害のある方 |
・職場に慣れるための環境や体制が作れる ・長く働きやすくなる ・仕事をスムーズに行えるようになる ・会社の人とコミュニケーションを取りやすくなる |
事業者 |
・障害のある方へのサポートやコミュニケーション方法を学べる ・一緒に働くうえでのポイントがわかる ・障害の特性に合った仕事を振り分けられる |
このように、ジョブコーチ支援を利用すると、障害のある方は仕事をしやすくなり、事業者も対象者に対してより効果的なコミュニケーションが取れるようになります。
就労定着支援との違い
障害福祉サービスには、就労移行支援等を使って一般企業に就職した障害者に対して支援や助言を行う「就労定着支援」というサービスがあります。
サポート内容はジョブコーチによる支援とおおむね共通していますが、対象者・支援期間・利用料金が異なります。
▼ジョブコーチ支援と就労定着支援の違い
ジョブコーチ支援 | 就労定着支援 | |
---|---|---|
対象者 | 求職、在職中の障害のある方(※) | 福祉サービスを利用して就職した人 |
支援期間 | 1〜8ヶ月 | 3年間 |
利用料金 | 無料 |
1割負担 (生活保護・低所得世帯は無料) |
※ ジョブコーチ支援が終了する時点で週20時間以上の就労を目標に設定する必要がある。障害者手帳がなくても利用可能。
ジョブコーチになるには?
ジョブコーチになるために必要な資格や試験はありません。
ただし、訪問型ジョブコーチもしくは企業在籍型ジョブコーチになるには、8日ほどの研修(集合研修4日+実技研修4日程度)を受ける必要があります。
- 訪問型ジョブコーチ…訪問型職場適応援助者養成研修を受講・修了
- 企業在籍型ジョブコーチ…企業在籍型職場適応援助者養成研修を受講・修了
研修は(独)高齢・障害・求職者雇用支援機能もしくは厚生労働大臣が指定する民間機関が実施しています。
- ジョブコーチの役割
- 作業指導の方法
- 障害特性と職業上の課題
- 支援計画に関する理解
- ケーススタディ
- 職場実習 など
民間機関の研修は有料(5万円程度)となりますが、一定の要件を満たせば「障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)」により半額補助を受けられます。
訪問型職場適応援助者養成研修と企業在籍型職場適応援助者養成研修では、受講の要件が異なりますので、事前に確認しておきましょう。
▼受講要件
訪問型ジョブコーチ | 企業在籍型ジョブコーチ | |
---|---|---|
研修名 | 訪問型職場適応援助者養成研修 | 企業在籍型職場適応援助者養成研修 |
受講対象者 |
・障害者の就労支援を行う法人に雇用されている、または医療機関に所属している ・障害者の就労支援に関する業務を担当している |
障害者雇用に携わっている人が対象。 ・障害のある方を雇用している、または雇用しようとしている法人に雇用されている ・企業在籍型職場適応援助を予定している、または障害者の雇用管理等に関する業務を担当している |
なお、受講できる会場は地域区分と時期により指定されているため、各研修機関にお問い合わせください。
ジョブコーチ支援の利用料金は?
ジョブコーチ支援の利用費用は、基本的に障害者・事業者ともに無料です。
また、ジョブコーチ制度を利用する事業者は障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)を受給できます。
この助成金は以下の2種類に分けられます。
- 訪問型職場適応援助者助成金
- 企業在籍型職場適応援助者助成金
それぞれの助成金の詳細については、以下の通りです。
▼障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)の概要
訪問型職場適応援助者助成金 | 企業在籍型職場適応援助者助成金 | |
---|---|---|
概要 | 訪問型ジョブコーチに無償でサポートしてもらった場合に支給される | 企業在籍型ジョブコーチによる支援を行った場合に支給される |
支給額 | 日額8,000〜1万6,000円 | 月額3万〜12万円 |
ジョブコーチ支援の利用方法は?
ジョブコーチ支援の利用は、以下の流れで行います。
- 事業主・障害者両者のジョブコーチ支援制度利用の合意を取る
- 「地域障害者職業センター」に申し込む
- 障害者職業カウンセラーが企業を訪問(面談や見学)
- 障害者職業カウンセラーとジョブコーチが企業を訪問
(支援計画書(案)の説明と支援開始に向けた打ち合わせ) - ジョブコーチ支援開始
- 振り返りとフォローアップ
ジョブコーチを利用するには「障害者本人」と「事業主」の合意が取れていることが条件となります。
また、サポートまでは約2週間から1ヶ月ほどかかる場合があるため、利用したい日にちから逆算して早めに申し込んでおきましょう。
>>地域障害者職業センター(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)ジョブコーチ支援の問題点は?
ジョブコーチ支援には障害者と事業者の双方にメリットがある一方で、制度を利用しても十分な効果がなかったという声があるのも実情です。
以下のようなケースが考えられます。
- 訪問型ジョブコーチで、障害者に寄り添いすぎるがあまり、事業者側の目線に立てないケース
- 企業在籍型ジョブコーチで自社の業務をよく把握しており仕事の切り出しはスムーズだが、研修を受けただけで障害の特性の理解が不十分なケース
- ジョブコーチではあるが、障害の種類によっては対応に苦慮しているケース
- ジョブコーチ以外の就労支援を兼任しており、障害者に対しての支援技術が向上していないケース
こういった問題点を解決するためには、養成研修で知識を習得するだけでなく、より実践的ですぐに使えるようなスキルを習得する必要があります。
ジョブコーチとの連携が放課後等デイサービスの支援の質を上げる
近年、障害のある方の雇用者数は年々増加しており、携わる職種もさまざまです。
それに伴い、就労系障害福祉サービスから一般就労への移行者数も毎年増加しています。
原則として18歳までの児童が通う放課後等デイサービスでも、高校卒業後の就労に向けたトレーニングや就職支援のニーズが増えているものの、対応できるプログラムを提供している施設は少ないのが現状です。
そのため、ニーズの高い中高生向けの就職支援・トレーニングプログラムを充実させることは支援の質を上げることにもつながり、他社との差別化にもなります。
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参考文献・URL
- 「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」(厚生労働省)
- 「障害者雇用助成金のごあんない」(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)
- 「『職場適応援助者助成金』のご案内〜訪問型職場適応援助者による支援〜」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機)
- 「『企業在籍型職場適応援助促進助成金』のご案内」(厚生労働省)
- 「ジョブコーチ支援」(東京都障害者職業センター)
- 「ジョブコーチ支援制度と養成研修の現状等について」(厚生労働省)
- 「ジョブコーチ支援制度の現状と課題に関する調査研究」(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター)
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執筆者
ミライクス運営事務局