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2023.11.23
2023.10.25
生活支援員とは?資格要件や向いている人について解説!
生活支援員は、障害のある方の生活をサポートする職種です。
主な勤務先は、障害者グループホーム(共同生活援助)や就労継続支援A型・B型といった障害福祉サービスを提供する施設となります。
生活支援員になるにあたって、特別な資格や実務経験・研修要件は不要なので、未経験でも目指しやすいのが特徴です。
居住系・日中活動系の障害福祉サービスでは、生活支援員が不足しているという調査結果があり、しばらくは生活支援員の求人が多い状況が続きそうです。
この記事では生活支援員の仕事や資格要件、向いている人などについて詳しく解説します。
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目次
生活支援員とはどんな仕事?
生活支援員とは、障害者グループホームや就労継続支援事業所などで、障害のある方の日常生活の支援や創作・生産活動の指導を行う職種です。
仕事内容や勤務先は次の通りです。
仕事内容
生活支援員の主な仕事内容は次の通りです。
1.日常生活の介助
生活支援員の主な仕事は、食事、入浴、排泄の介助など、日常生活の支援です。
利用者の生活面や健康面をサポートします。
2.創作・生産活動の指導
園芸、織物をはじめとする創作活動や生産活動の指導を行うこともあります。
このほか、利用者の相談対応や、サービス管理責任者の補助業務を行うなど、勤務先によって業務内容が異なる場合があります。
勤務先
生活支援員の職場は、障害がある方が入所・通所する施設です。
人員配置基準に生活支援員が含まれる施設には、次のようなものがあります。
- 障害者グループホーム(共同生活援助)
- 障害者が日常生活のサポートを受けながら、少人数で共同生活を送る施設です。
- 生活支援員が人員配置基準に含まれているのは、「介護サービス包括型」と、「日中サービス支援型」の2つです。
- 生活支援員は主に夜間に食事・入浴・排泄などの介助を行います。
- 就労継続支援A型
- 一般企業で働くのが難しい障害者に、就労の機会を提供したり、能力向上に必要な訓練などの支援を行います。
- A型では、利用者が事業所と雇用契約を結んで働き、給与を得ることができます。
- 生活支援員は、利用者の健康管理の指導、生活相談、作業のサポートなどを行います。
- 就労継続支援B型
- 一般企業で働くのが難しい障害者に、就労の機会を提供したり、能力向上に必要な訓練などの支援を行います。
- B型では利用者と事業所は雇用契約を結ばず、生産活動の報酬として工賃を得ます。
- 生活支援員は、利用者の健康管理の指導、生活相談、作業のサポートなどを行います。
- 就労移行支援
- 一般企業への就職を希望する障害者を対象に、就労に必要な知識・能力を向上させる支援を行います。
- 生活支援員は、利用者の健康管理や相談業務などを行います。
- 生活介護
- 常に介護が必要な障害者を対象に、主に日中の時間帯の障害者支援施設で、日常生活の介護や支援、創作的活動・生産活動の機会の提供などの支援を行います。
- 生活支援員は、介護や掃除、調理などの家事支援、相談業務などを行います。
職業指導員や世話人との違い
障害福祉サービスを提供する施設で働く職種には
- 職業指導員
- 世話人
もあります。
仕事内容や勤務先など、生活支援員との違いを見てみましょう。
生活支援員 | 職業指導員 | 世話人 | |
---|---|---|---|
仕事内容 | ・食事・入浴・排泄などの支援 ・日常生活の相談業務 ・創作や生産活動の指導 |
・一般企業で働くために必要な技能やマナーの習得を支援 | ・家事支援や金銭管理、健康管理など、日常生活を支援 |
勤務先 | ・障害者グループホーム ・就労継続支援A型事業所 ・就労継続支援B型事業所 ・就労移行支援事業所 ・障害者支援施設 |
・就労継続支援A型事業所 ・就労継続支援B型事業所 ・就労移行支援事業所 |
・障害者グループホーム |
職業指導員は就労に必要な支援、世話人は日常生活の支援と、仕事内容は比較的はっきり分かれています。
また、世話人の勤務先は障害者グループホームに限定されています。
これに対して生活支援員は、生活支援や介護、創作や生産活動の指導など仕事の内容が幅広く、勤務先もさまざまです。
生活支援員になるために資格は必要?
生活支援員は、無資格・未経験でも目指せる職種で、資格要件や実務経験、研修修了要件は特に定められていません。
つまり、やりたい人なら誰でも始められる仕事といえますが、
- 介護職員初任者研修
- 介護職員実務者研修
を修了すると、介護の仕事の知識を習得でき、応募できる求人が増えたり、給与アップにつながる可能性もあります。
それぞれの研修を詳しく見てみましょう。
- 介護職員初任者研(旧ヘルパー2級)
- 介護の仕事の基礎知識や技術を習得する研修です。
- 通信講座とスクーリングを合わせた130時間の初任者研修を受講し、修了試験に合格すると資格が取得できます。
- 介護職員実務者研修
- 介護職員初任者研修の上位資格で、無資格・未経験でも受講できます。
- 初任者研修と共通の受講科目も含め450時間の実務者研修を受講します(すでに介護職員初任者研修に合格している場合は、一部科目が免除され320時間となります)。
- 介護職員実務者研修を修了し、実務経験3年以上の人は、介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。
- また、実務者研修終了の資格があると、訪問介護のサービス提供責任者として働くことも可能になります。
- このほか、事業所によっては普通自動車免許の保有を応募要件としているところもあります。
生活支援員が取得を目指せる資格は?
生活支援員としての実務経験を生かして、さまざまな資格の取得を目指すことができます。
生活支援員として勤務する中で将来のビジョンを見つけたら、積極的に資格取得にチャレンジし、キャリアアップを目指すのもいいでしょう。
社会福祉士・精神保健福祉士
相談援助業務の専門性をさらに高めたい人には、社会福祉士や精神保健福祉士を目指す道があります。
- 社会福祉士
- 国家資格のひとつで、障害者をはじめとする日常生活を営むのが困難な人に対して助言や指導を行い、必要な福祉サービスとつなげる利用調整などを行います。
- 社会福祉士の資格は、障害福祉サービスの事業所のほか、病院や地域包括支援センター、介護施設などで活かせます。
- 精神保健福祉士
- 国家資格のひとつで、精神障害者の社会復帰や社会参加などを支援します。
- 精神保健福祉士の資格は、障害福祉サービスの事業所のほか病院、自治体、保健所などで活かせます。
-
社会福祉士・精神保健福祉士の受験資格は、
- 卒業した大学
- 大学での履修科目
- 相談援助の実務経験の年数
- 一般養成施設での課程を修了していること
など、経歴によっていくつかのパターンがあります。
- 大学・短大等を卒業していなくても、生活支援員として4年以上の実務経験がある場合、一般養成施設で所定の課程を修了していれば受験資格を得られます。
- ただし、介護等の業務を行う生活支援員として「介護福祉士国家試験」を受験した人は、その実務経験をもって社会福祉士国家試験を受験することはできないので注意してください。
介護福祉士
介護業務の専門性を上げたい人は「介護福祉士」の資格取得がおすすめです。
国家資格のひとつで、障害により日常生活を営むことに支障がある人の介護を行ったり、介護に関する指導を行います。
生活支援員として従業期間3年以上かつ従事日数540日以上介護の実務経験を積み、養成施設等で実務者研修を修了すると、受験資格が得られます。
ただし、
- 勤務先の施設・事業の配置基準により介護職員が置かれている場合
- 業務分掌表に記載された主業務が「介護等の業務」ではない場合
は、実務経験にならないので、あらかじめ確認するようにしましょう。
また、介護等の業務を主業務とする生活支援員の実務経験によって介護福祉士国家試験を受験した場合は、その業務経験は「社会福祉士・精神保健福祉士国家試験」の実務経験にはなりません。
サービス管理責任者
生活支援員として実務経験を積み、管理職を目指す道もあります。
サービス管理責任者は、障害福祉サービスの質の向上を図るため、サービスを提供している事業所ごとに配置が義務付けられている職種です。
利用者のアセスメントや個別支援計画の作成や職員の指導など、サービス提供のプロセス全般を管理する役割を担います。
サービス管理責任者になるには、実務経験を経たうえで2つの研修を修了しなくてはなりません。
1.実務経験の要件
生活支援員は「直接支援業務」に相当し、8年以上の実務経験が必要です。
ただし、介護職員初任者研修修了者など有資格者は5年以上に短縮されます。
実務要件を満たす2年前から、基礎研修の受講が可能です。
2.基礎研修の受講
以下の講義・演習を受講します。
- 相談支援従事者初任者研修の講義部分の一部…11.5時間
- サービス管理責任者基礎研修の講義・演習…15時間
3.2年以上のOJT
基礎研修を修了すると、個別支援計画の原案の作成が可能になります。
4.実践研修
サービス管理責任者等実践研修(14.5時間)を修了すると、サービス管理責任者として正規配置が可能となります。
利用者一人ひとりによりよい障害福祉サービスを提供したいと考える人は、生活支援員としての経験を活かし、資格取得を目指してみるといいでしょう。
生活支援員に向いている人はどんな人?
障害者やその家族と接する生活支援員の仕事に向いているのは、次のような人です。
- 観察力がある人
- 利用者の行動や表情の変化に気づき、急な体調不良や異変にも素早く対処するには、観察力が求められます。
- 明るい人
- サポートを行う側に元気がないと、利用者の気持ちも晴れないもの。利用者の状況に合わせながら、明るく元気に行動しましょう。
- 相手の立場を考えて行動できる人
- 生活介助をする上で、利用者の様子を観察し、どんな気持ちでいるのかを汲み取る必要があります。コミュニケーション能力があり、利用者の声を傾聴できる人が向いています。
- 体力がある人
- 入浴の介助など、体力が必要な仕事も行います。体力に自信のある人ならなおいいでしょう。
- 落ち着いている人
- 利用者がパニックになるなど、いろいろなことが起きても、落ち着いて一つひとつの事例に冷静に対応しなくてはいけません。また、支援内容をしっかり理解し、ダメな事はダメと落ち着いて説明できる力も必要です。
- 協調性のある人
- 職員同士がチームとなり、よりよい支援のために話し合ったり、アイディアを出し合います。協調性があり、一丸となって取り組める人が向いています。
生活支援員の給料はどれくらい?
2021(令和3)年9月時点の生活支援員の平均給与額(月額及び年収)は、常勤と非常勤それぞれで次の通りです。
常勤の平均給与額(月額)は福祉・介護職員処遇改善加算により、2020(令和2)年よりも1万1,280円増加しています。
▼生活支援員の平均給与額
常勤 | 非常勤 | |
---|---|---|
平均給与額(月額) | 32万1,900円 | 10万7,580円 |
平均給与額(年収) | 386万2,800円 | 129万0,960円 |
※平均給与額は、基本給+手当+一時金(4~9月支給金額の1/6)により算出。10円未満を四捨五入。
ちなみに生活支援員や就労支援員などを含めた「福祉・介護職員」の平均給与額は次の通りです。
▼福祉・介護職員の平均給与額
常勤 | 非常勤 | |
---|---|---|
平均給与額(月額) | 30万8,760円 | 9万9,160円 |
平均給与額(年収) | 370万5,120円 | 118万9,920円 |
生活支援員の平均給与額(年収)は約386万円で、「福祉・介護職員」全体の平均給与額よりも高くなっています。
なお、給与は勤務先や仕事内容、年齢によって異なります。入所施設の夜勤手当、資格取得手当、管理職への役職手当などにより、平均額より高くなる可能性もあります。
出典:「令和3年度障害福祉サービス等従事者処遇調査等調査結果」(厚生労働省)
【調査】生活支援員の仕事の楽しいところ、大変なところは?
生活支援員経験者へのアンケート調査結果から、生活支援員の仕事の楽しいところや大変なところに関する口コミを紹介します。
【調査データ】
実施時期:2023年4月
調査概要:生活支援員として働いたことのある方へのアンケート
調査対象:生活支援員として勤務したことのある方(9名)
調査媒体:クラウドワークス
楽しいところ
利用者の日常生活を支える生活支援員としては、利用者が日々、仕事や作業に取り組み、できることが増えていく姿を目の当たりにできることが、なによりの喜び、そして楽しみといえるでしょう。
利用者の方が見せてくれる笑顔も「また頑張ろう」「もっと楽しんでもらいたい」という前向きな気持ちの支えになるようです。
勤務を重ねるごとに、利用者さんとの信頼関係が生まれて、喜びや楽しみを共有できたのは何よりの財産です。(40代女性/生活介護勤務)
利用者の方の就職が決まるのが、この上ない喜びでした。給与を得て、納税者となり、社会的に自立していく姿を見ると感慨深いですね。(20代女性/就労移行支援勤務)
障害のある方が、困難に挑み、できなかったことができるようになると、喜びを感じます。利用者さんの笑顔が増えると「もっと楽しくしたい」という気持ちが生まれます。(40代男性/障害者グループホーム、就労継続支援B型勤務)
利用者が穏やかに作業を取り組めた時や、笑顔で話しかけてくれた時、名前を呼んで笑ってくれた時に、楽しさを感じます。(20代男性/生活介護勤務)
大変なところ
生活支援員の仕事の大変なところとして体力」「が挙がりました。
入浴や排せつなどの身体介護や移乗・移動介護は、コツがあるとはいえ、体力を消耗する仕事であることに間違いありません。
また、人手不足による長時間勤務や、利用者から暴言を吐かれたり手をあげられることが原因となり、心身ともに疲弊するケースも少なくないようです。
勤務時間が不規則な職場だったので、生活リズムを整えるのが難しかったです。また、自傷、他害のある方の生活支援では、職員全体で手探りでその対応を考えました。こちらが怪我をすることもあり大変でした。(40代女性/生活介護勤務)
1番は体力面です。入浴や車椅子移乗、ベットへ臥床する時など、リフトやスライディングボードを利用することもありますが、利用者の方の体が大きい場合はやはり体力が必要になります。トイレ誘導も意外と体力がいるので、慣れるまでには相当苦労しました。(30代女性/障害者グループホーム勤務)
利用者の情緒が乱れ、設備を壊した時や他害をした時は大変だと感じます。落ち着かせるのも時間がかかるし、事故報告書の制作など事務作業も増えてしまいます。また興奮している利用者に噛まれたり頭突きをされると、肉体的、精神的にもしんどくなりますね。(20代男性/生活介護勤務)
言葉でのコミュニケーションがスムーズに取れる方もいれば、それが難しい方も大勢います。言い回しを変えたり、文字やイラストにしたり、いろいろ考えながら支援をする必要があるため、知識を振り絞るのが大変です。それでもこちらの意図が伝わらず、相手を怒らせ罵声を浴びせられたり、手を上げられることも。精神的にショックを受けることもあります。(30代女性/障害者グループホーム、就労継続支援B型、生活介護勤務)
高齢者介護から障害者福祉事業所に異動した時は、支援に対する考え方を整理するのが大変でした。障害者福祉事業所では、自立、自律のための約束事が出来ない利用者には指導しなくてはいけないのが、なかなか難しくかったです。(30代男性/障害者グループホーム、就労継続支援B型、生活介護勤務)
生活支援員の将来性は?
生活支援員の需要は、今後も高い状況が続くと考えられます。
独立法人福祉医療機構が2020年度に行った人材確保に関する調査では、居住系・日中活動系の障害福祉サービスの約半分が職員不足であると回答し、不足している職種に生活支援員をあげた事業所は7割以上に上りました。
▼不足職種として「生活支援員」と回答した割合(複数回答)
居住系 | 91.7% |
---|---|
日中活動系 | 78.6% |
就労系 | 57.9% |
その他 | 17.6% |
出典:「2020年度 障害福祉サービス事業所等の人材確保に関する調査について」(独立法人福祉医療機構)
この数字から、特に施設入所支援や共同生活援助といった居住系の障害福祉サービスで生活支援員不足を感じていることがわかります。
障害福祉サービスの利用者数は、
- 令和2年10月…126.9万人
- 令和3年10月…137.4万人
で、伸び率(年率)は6.0%です。
障害福祉サービス等の事業所数も増加しており、生活支援員の求人が多い状況が続くと考えられます。
転職の際などに有利になるよう、今のうちに経験を積み、資格を取るなどして、キャリアアップを意識しておくといいでしょう。
障害福祉分野での開業を目指すならミライクス
生活支援員は、食事・入浴・排泄などの支援、日常生活の相談業務など、障害福祉サービスのさまざまな場面で活躍できる仕事です。
近年増加している就労継続支援B型や障害者グループホームに必ず配置しなければならい職種でもあります。
しかし、現場で最も不足していると考えられる人材が生活支援員です。
社会福祉サービスの開業にあたっては、生活支援員をはじめとする人材確保は事業成功への第一歩。
ミライクスは、放課後等デイサービス、就労継続支援B型、障害者グループホームの開業支援を行っています。
スタッフの採用支援はもちろん、各種申請書類の作成、物件選びなど、障害福祉事業の開業を多角的にサポートします。
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参考文献・URL
- 「生活支援員」(独立行政法人福祉医療機構)
- 「障害者福祉施設指導専門員(生活支援員、就労支援員等)」(厚生労働省)
- 「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修の見直しについて」(東京都)
- 「障害福祉分野の最近の動向」(厚生労働省)
- 「共同生活援助(介護サービス包括型・外部サービス利用型・日中サービス支援型)に係る報酬・基準について≪論点等≫」(厚生労働省)
- 「令和3年度障害福祉サービス等従事者処遇調査等調査結果」(厚生労働省)
- 「2020年度 障害福祉サービス事業所等の人材確保に関する調査について」(独立法人福祉医療機構)
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執筆者
ミライクス運営事務局